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第2話

(そう言えば、こいつ、なんでずっと大きいままなんだ?)  狼は、一度くらい出しただけでは萎えないんだろうか?  熱くて朦朧とする頭に、ふと、そんな疑問が過る。  口いっぱいの猛りを咥えたまま見上げると、切羽詰まった表情を浮かべている琥珀色の瞳と視線が絡む。  アンジュは上目遣いにアンバーと目を合わせたまま、首を傾げた。  自分は何度も達したけれど、そう言えばアンバーはどうだったんだろう。  初めて経験する発情期。無我夢中で求めるばかりで、相手のことまで考える余裕が無かった事に、アンジュは今初めて気が付いた。  アンバーのはち切れんばかりの屹立から唇を離すと、それは先端から溢れる先走りとアンジュの唾液でぐっしょりと濡れそぼり糸を引いた。  アンジュがその猛りに指を絡め、ゆっくりと上下させると、アンバーは苦しそうに「うう……」と、小さな声を熱い吐息と共に漏らす。 「……お前、もしかして……一度もイってない?」  アンバーの様子を窺うように聞くアンジュの声も、消え入りそうに掠れた。  手の中の熱さと、ずっしりとした重みが堪らない。  早く、もう一度これで身体の奥を一杯にして欲しい。  だけど、もしかしたら……アンバーは自分の身体では満足できないんじゃないだろうか。  そんな考えが頭を過ぎると、急に不安に襲われて胸が押し潰されそうになる。 「オレの身体じゃ、気持ち良くなれない……?」  いくら好きでも、身体の相性というものがあるのかもしれない。  初めてアンバーと出逢った時、周りの喧騒が消え、まるでこの世界には彼と自分しかいないような錯覚と、優しくてフワフワして、それでいて胸の奥が締め付けられる不思議な感覚を覚えた。  ──だけど、もしかしたら……。 「……アンジュ……そんな事……」  アンバーは、苦しそうに言葉を零しながら、琥珀色の瞳を大きく瞠いた。  イエローとゴールドなのか、小豆色と銅色なのか、不思議な色合いが虹彩の中で混じり合い揺れる。  アンジュは、その瞳で見つめられると視線をそらせなくなってしまう。  初めて出逢ったあの時も、アンジュは、アンバーのこの琥珀色の瞳に魂が惹きつけられた。そんな気がした。  ──でも、そう感じたのは自分だけで、もしかしたらアンバーはそこまで思わなかったんじゃないだろうか。  そう考えると、胸の奥から熱いものが込み上げる。  それはヒートによる熱じゃないのは確かだ。  熱くて熱くて、堪らなく苦しくて、切なくて。薄っすらと瞳に膜がかかったように視界が滲む。

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