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第1話 三年後
……ナツネくん……
ごめん、ごめんね……
あの地獄絵図は、僕の脳裏にしっかりと焼き付いてしまい……今でも消える事はない。
そもそも、全てが現実離れしていた。
長い長い悪夢を見ているような世界。
アンダーグラウンド。
人間よりも遙かに大きなカマキリ型の生物と政府が手を組んで、人間を奴らの食糧として提供。
それに巻き込まれた僕とカズ。
カズは麻薬のような甘くて美味しいらしいジュースを飲み、有り得ない体型──水風船のようなぶくぶくの肥満体、幼児化した脳へと退化し、その化け物の子供の食糧になってしまう所だった。
一般人には知られる事のない施設、ゆりかご内で出会った生存者──ナツネと山引。
足手まといになるカズを連れて彼らと行動を共にし、途中、施設内の天井に住み内部をよく知る年配者のおぐっちゃんと出会い、僕等が行き着いた先は……
「………!」
クイーンに何度も食われる、大量のナツネ。
ナツネは、半身を失っても死なない……再生可能である特殊な人類──増殖種。
政府が、彼らにこれ以上人間を提供しなくてもいいようにと創り出した……いわば人類の為の生贄。成功したただ一人。
化け物に何度体を引き千切られ、何度食われても、死ねない体。
それをモニターで見ている事しか出来なかった僕。
……助けたい……
助けたかった。
命をかけて守ろうとした、ナツネくんの母のように。僕も。
山引の体を借りてクローンを創り出し、クイーンの部屋へと向かうナツネを、何故止められなかったのか………
クイーンのいる扉を閉めるよう、おぐっちゃんに言われてあんなに躊躇したのに。
『し・め・ろ』
カメラに顔を向けたナツネの口の形。
もしかしたら、『に・げ・ろ』だったかもしれないのに……
僕は……
閉めるボタンを、押してしまった。
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