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第2話

化け物は、共食いの果てに……世界から消えた。 世の中は驚くほどのスピードで復興している。 その度に、あの悪夢のような世界が嘘だったかのように倒錯していくのだ。 ……ゆりかご地下室には、今もナツネがクイーンに食われ続けているというのに。 その犠牲の上に立つ平和は、何なんだ。 結局ナツネは、人類の犠牲になる為に生まれてきたのか…… 『痛いに決まっている』 不死身ではあるものの、やはり痛いと言っていた事を思い出す。 その『痛い』を日に何百回と感じているんだろう…… 何度も再生して、切り刻まれて…… その繰り返し…… 「……うっ」 胃の中のものが迫り上がって、吐きそうになる。 ベッドで横になったまま体を二つに折れば、幾らかマシになったような気がした。 「……眠れないのか?」 声を掛けられて見れば、首にタオルを掛け上半身裸のままのカズがそこにいた。 どこかさっぱりした顔つきに、湿った髪。シャワーでも浴びたのだろう。 「ん……」 カズから視線を外す。 施設から脱出した後、ナツネを助けたいと戻ろうとし……おぐっちゃんとカズに引き止められた。 あんなに足手まといだったカズは、脳が少しずつ正常に戻っていたようで、頼りがいのある存在となり、泣き崩れた僕を背負って街まで運んでくれた。 あれから──カズとはルームシェアしている。 世界が危機から脱した後も、僕達は生きていかなければならない。 ボールのようだったカズの体型は殆ど元に戻り、今は見る影もないほど普通の好青年に見える。 「………」 無言のまま、カズがベッドの端に座る。 「ごめん……そんな気分じゃない」 更に体を小さく丸める僕の髪を、カズがそっと触れた。 その手を払うかのように、頭を小さく振る。 「……ごめん、カズ」 「いいって。謝るなよ」 カズの優しい声。

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