2 / 19
第2話
化け物は、共食いの果てに……世界から消えた。
世の中は驚くほどのスピードで復興している。
その度に、あの悪夢のような世界が嘘だったかのように倒錯していくのだ。
……ゆりかご地下室には、今もナツネがクイーンに食われ続けているというのに。
その犠牲の上に立つ平和は、何なんだ。
結局ナツネは、人類の犠牲になる為に生まれてきたのか……
『痛いに決まっている』
不死身ではあるものの、やはり痛いと言っていた事を思い出す。
その『痛い』を日に何百回と感じているんだろう……
何度も再生して、切り刻まれて……
その繰り返し……
「……うっ」
胃の中のものが迫り上がって、吐きそうになる。
ベッドで横になったまま体を二つに折れば、幾らかマシになったような気がした。
「……眠れないのか?」
声を掛けられて見れば、首にタオルを掛け上半身裸のままのカズがそこにいた。
どこかさっぱりした顔つきに、湿った髪。シャワーでも浴びたのだろう。
「ん……」
カズから視線を外す。
施設から脱出した後、ナツネを助けたいと戻ろうとし……おぐっちゃんとカズに引き止められた。
あんなに足手まといだったカズは、脳が少しずつ正常に戻っていたようで、頼りがいのある存在となり、泣き崩れた僕を背負って街まで運んでくれた。
あれから──カズとはルームシェアしている。
世界が危機から脱した後も、僕達は生きていかなければならない。
ボールのようだったカズの体型は殆ど元に戻り、今は見る影もないほど普通の好青年に見える。
「………」
無言のまま、カズがベッドの端に座る。
「ごめん……そんな気分じゃない」
更に体を小さく丸める僕の髪を、カズがそっと触れた。
その手を払うかのように、頭を小さく振る。
「……ごめん、カズ」
「いいって。謝るなよ」
カズの優しい声。
ともだちにシェアしよう!