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第19話

夢を思い出した。 ……どこまでが現実で、どこまでが夢なのかは解らない。 だけど、ナツネと山引と僕の3人で…… 月夜の中を一緒に歩いていた。 「それで………会えたんだ」 カズの驚いた瞳。 「ナツネくんがね……地下にいた奴らを根絶やしにしたって、言ってた」 どうやって根絶やしにしたか。 ナツネくんが話してくれている時 山引くんが現れて…… 「……僕はずっと、ナツネくんは一人なんだと思ってた。 あの地獄のような場所で、一人苦しんでいるんだって…… でも……僕にカズがいるように、ナツネくんにも山引くんがいたんだ。 ……ナツネくんの体の中に、山引くんが」 カズに抱かれる度に思ってた。 このまま溶け合って、カズの体の一部になってしまいたいって…… ……多分、二人はそういう事だったのかもしれない…… 瞳が熱くなり、視界が涙で歪む。 「二人は相変わらずで。 僕をからかいながら、 心に抱えていた荷物を、二人がいつの間にか下ろしてくれてて…… 別れ際……ナツネくんが僕に、笑顔を見せてくれたんだ。 ……それに……救われた気がした」 カズの落とした涙が伝い、僕の溢れた涙に重なって……溢れ落ちる。 「カズ……」 そう言って潤む瞳の焦点をカズに合わせれば、カズが優しい瞳を向け、僕の髪をそっと撫でる。 「……お待たせ」 カズの首に、頬に触れてた片腕を回す。 そして引き寄せて、再び唇を重ねた。 『ねぇ、カズ』 『なんだ?』 『あそこに落ちてた林檎、カズが買ってきたの?』 『……うん』 『どうして……?』 『……どうして、って…… 伊江に食わせたくて』 『食べたい』 『こっちが済んだらな』 『……えぇー。もう喉カラカラで、死んじゃいそう』 『なら、俺の飲んで』 『……変態』 そんな僕達のやり取りを ドアの外からそっと 2つの林檎が静かに見守っていた。 《おわり》

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