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番外編①

文化祭のその後というかその場でイチャつく2人を見ないようにしていた生徒会の人達の話 打ち上がった最後の花火は美しく散って行った。翼、敬吾、雫はいないものと扱われている。 3人とも分かっていた。 自分たちの背後で大和と夏乃がキスをしあい、告白し合うのを。 それを知らないふりをして見ないふりをして花火を見上げていた。 だが、花火を終わった今、振り返らないのは不自然。 さぁ、どうするか。 翼は隣にいる敬吾に目線で訴える。 『あの2人漸くくっ付いたみたいでよかったですね⁉︎』 『そうだね。それで?俺たちはどうすればいいわけ?普通に背後振り向いていいわけ?俺、大和君に殺されないかな?』 『少し落ち着きましょう。私にいい案があります。わざと背後を振り向いたまま花火の感想を言うんです。』 『なるほど、それで俺たちいるよってアピールするんだね。』 「花火、きれ…。」 敬吾と翼が感想を言う前に雫が声を漏らした。目線での会話に雫は参加していない。しかし、ジャストタイミングで雫は声を発した。 『しずくぅぅぅ…。良くやりました‼︎流石雫です。これで背後を振り返ることが…。』 『待って‼︎翼君。2人の世界に入り過ぎてて聞こえてないよ‼︎』 雫を目線だけで褒め称えていた2人だが、大和と夏乃が全く聞いていないことに気づいた。まさしく2人の世界に入ってしまっている。 『なんですって⁉︎それじゃあどうすれば…。』 「やまと?なつ…の?ど、した?」 『しずくぅぅぅ⁉︎』 目線の会話。翼と敬吾の心の声が被った。雫は平然とある意味空気を読まずに夏乃と大和に話しかけたのだ。 「あっ、は、花火、綺麗だったな‼︎」 「うん‼︎2人、ともうまく、いった?」 「うまくって…。」 「つき、あう?」 ボンっと顔を真っ赤にする夏乃。ちらりと横にいる大和を見上げるとにやりと笑った。 「うっ、うっせぇ!」 「…よかった。」 「あっ、ああ。」 純粋な笑顔を浮かべる雫にこれ以上の暴言は吐けない。頬をかきながら素直に頷いた。それを見た敬吾は悪魔の微笑みを浮かべる。 「えー、付き合うことになったんだぁ。でぇ?どこをどう好きになったのぉ?」 「う、うるせぇ。」 「なんでなんで?教えてくれないんだぁ。あーあっ、じゃあ勝手に考えよう。へー、そこがぁ?へぇ。いやらし〜い。」 「んなっ、やめろ!変なこと考えんなふざけんな!」 「敬吾、夏乃を揶揄うのはよしなさい。巽…良かったですね。」 返事はしない。ただ、ふっと笑った大和の顔は今までで見たことのないくらい緩く穏やかだった。 「それじゃあ、後片付けしましょうか。」 そして、またいつもの日常が始まる。

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