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7月 part1-2

郷田氏の大声に、近くのテーブル席にいる男女が眉をひそめる。このままだと、バー全体の雰囲気を損ねてしまいかねない。 …考えろ、この場を丸く収める方法を。この人にある程度、満足して帰っていただく、そういう方法を考え… 「お待たせ致しました。〈クイーン〉でございます」 七星が、深い琥珀色のカクテルを、恭しく郷田氏の目の前に置く。 …信じられない。何やってんだ、七星の馬鹿野郎! まだカウンターにすら立たせてもらえないド新人が! その人、日本バーテンダー協会の関東支部の理事だぞ!審査員とかやってる人だぞ!猿真似カクテルが通用するわけないだろ!今すぐ謝罪して引っ込めろ!くっそ、こうなったら俺が謝罪するしか… 「ああ、この味だ!やはりこれでなくては。さすが佐久間オーナーだ!」 上機嫌で言う郷田氏。…どういうことだ? 「すみません。オーナーは電話対応中で、今は出て来れないんです。でも、貴方様のことをお話したら、電話を保留にして、すぐにこのカクテルを作ったんです。貴方様は、特別なお客様なのですね」 爽やかな笑顔で、ぬけぬけと嘘八百を並べる七星。 「そうだろうとも!佐久間オーナーは…あいつは、この私が育てたんだよ!あいつが初めて全日本の大会に出た時から、私は目をかけてやっていたんだから」 「そうなんですね」 機嫌よく語り続ける郷田氏を七星に任せ、俺は一旦下がる。 なんだ?カクテルの味すら分からなくなるくらい、酔っぱらってるのか? それとも… …あの七星が、本当に、オーナーの〈クイーン〉を、完璧に再現したっていうのか?

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