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7月 part3-3

「七星…なんでこんな時間に…」 身体が急激に冷えて固まる。声が掠れる。今、こいつに一番会いたくなかった。 「ああ、僕、スマホ忘れちゃって。 …月城さん、いつも、こんな時間まで残って、カクテルの勉強してるんですか?すごいですね。尊敬します」 穏やかな笑顔で言う、七星を見て。 今度は、身体がかあっと熱くなる。 なんだその、上から目線のセリフは。ふざけんな!馬鹿にしてんのか、俺のことを! そうだよな、おまえみたいな天才様は、こんなダサい努力なんかしなくても、どんなカクテルでも作ることができるんだもんな。凡人の無駄な足掻きだとでも思ってるんだろう! 「月城さん?顔色が悪いですけど、大丈夫…」 「うるさいっ!」 七星が俺の方に伸ばしてきた手。その七星の手を、右腕で振り払う。カウンター上のリキュールの瓶に、俺の右腕が当たり、足元に瓶が落ちる。耳障りな音を立てて、瓶が砕け散る。 「おまえなんか…」 違う。これは、七星に言ってるんじゃない。これは… 「おまえなんか、大嫌いだ」 …これは、どこまでも凡人な、自分に向けた言葉だった。

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