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9月 part 2-2

「バーを開業する時。沿線がどうとか、立地がどうとか考えるのも、もちろん大切だが。 もっと大事なのは、店の家賃がいくらか、ということだな。お店の1ヶ月分の家賃を、3日間の売り上げで出せれば、その店は儲かっているといっていい。 例えば、うちはだいたい20坪の店舗で、店の家賃は50万くらい。ということは、一日に16万ほど売り上げれば、なんとかやっていけるということだ。うちはそんな高い店じゃないから、客ひとりが落とす平均は5000円程。ということは、一日に32人以上来店すればいい。実際は売り上げと利益はイコールじゃないから、もう少し複雑だが。まあ、目安として考えろ。 あとは、価格設定。飲食店の原価率の基本は3割だ。お酒は水物だから、カクテルに関してはそこまで気にしなくてもいいが、食事やつまみについては注意が必要だな。仕入れ値だけでなく、人件費や店の維持費なども勘定に入れて、メニュー作成をしないといけない。そして、メニューの価格によって、その店の客層が決まる。 つまり、店の方針はふたつにひとつ。 客単価を上げて、より多くの金を落としてもらうか。 回転率を上げて、より多くの客に来てもらうか。 山本の店は前者だ。少数の有名人が多くの金を落とす。そのかわり、滞在時間が長く、回転率は悪い。 オレの店は後者だな。立地上、多くの客が来るが、店をハシゴするやつが多いから、滞在時間は短く、回転率が良い。そのかわり、ひとりが落とす金は少ない」 「はあ…」 いや、勉強になるけど。なんていうか、すげえお金の話とか、あけすけに語るんだな、この人。

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