ガッ、ドシャッ！ 入口の木製の開き戸に、何かがぶち当たる音がした。それも、何度も。 「なんだ！？」 桐谷は慌てて身体を起こし、上半身をひねって入口の方を見る。俺の手首を押さえつけていた、奴の左手の力も抜けている。 今だ！ 俺は縛られた手首で、桐谷の左腕を振り払う。そして、手首ごと、思いっきり奴の身体に叩きつけた。 「ちっ！」 桐谷が再び俺を押さえつけようとした瞬間。 ドンッ、ガシャーン！ 入口の扉に当たる鈍い音。何かが割れる音。 さすがに桐谷も焦ったように入口の方に振り向き、腰を浮かしかける。 俺はもがきながら右半身をひねり、ほふく前進をするように、奴の下から移動する。そして、縛られた手首と膝を床に押しつけて勢いをつけ、なんとか立ち上がる。 立ち上がった俺は、桐谷に向かって突進した。ぶつかった衝撃で、奴はカウンターに背中をぶつけ、呻く。 俺はそのまま入口の扉に向かって走り、サムターンを回して鍵をあけた。