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10月 part 3-6
「七星、俺…」
「おいしかったですね。じゃ、行きましょうか。すみません、お勘定お願いします」
俺の声に被せるように、七星は部屋の内線で、仲居さんを呼ぶ。
自分が払うと言い張る七星を抑え、二人分の勘定を済ませ、外に出る。
東京メトロの赤坂見附駅まで一緒に歩く。曇っていて、月も星も見えない夜。冷たい風がほおを撫でていく。
となりを歩く、カーキ色のニットを着た七星。俺は時折、七星を横目に見る。そして黙ったまま、七星の子ども時代に思いを馳せていた。
「じゃ、拓叶さん。今日はありがとうございました。また明日」
駅の改札に消えていく七星の姿を見送る。
一瞬、追いかけようかと思った。でも、呼び止めたあと、なんて言ったらいいのか分からない。自分が何を言いたいのか、自分でもよく分からない。
なあ七星、俺は…
俺は、おまえのことを…
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