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第5話-2

「悠斗?」 大輝の問いかけには答えず、俺はおっさんの方にゆっくり近づいていく。そして、おっさんの足を、思いっきり踏んだ。 「痛っ!何をするんだね、君は!」 「あー、すんませんね」 言いながら、スマホの画面を見せる。そこに書いてある文字を見て、おっさんの顔が赤くなり、そして青くなる。さっと立ち上がり、そそくさと別の車両へと移っていった。 「悠斗、どしたの?」 座席に戻った俺に、大輝が心配そうに問いかける。俺はため息をついてから言う。 「痴漢だよ」 「えっ、痴漢?」 「そ。大人しそうな子だから、狙われたんだろうね。」 まったく、真っ昼間だっつーのに、ああゆう輩は。てゆうか、仕事中じゃないのかね、おっさん。 「そっか…悠斗、よく気づいたね」 「あーまあ、俺も、何回か同じ手口でやられたことがあっ……」 … … …しまった、墓穴を掘った…

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