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第5話-3

「悠斗、ねえ悠斗、初めて聞いたんだけど。えっ、しょっちゅう痴漢にあってるの?」 「ーーー!しょっちゅう、ではないっ!」 私服の時はもちろん、男の制服着てるのに痴漢されたこともある。 もちろん、女の子ほどではない。月に1回あるかないか、だが。 教室で、女子たちが、今朝痴漢にあってさ、マジキモいんだけどーとか話してるのを耳にすると、心の中で、気持ちめっちゃ分かると同情する自分がいる。 「つーかホント、男に触られても気持ち悪いだけだっつーのに、マジ頭ん中どーなってんだか、あーゆう輩って」 コンプレックスを知られてしまった恥ずかしさから、つい言葉遣いが乱暴になる。と、大輝の眉と眉の間に皺がより、口元がきゅっと引き締まった。 「ん、どうした?大輝?」 俺が顔を覗き込むと、大輝は、はっとしたような顔をしてから、いつもの笑顔に戻った。 「なんでもない。いつも大変なんだな、悠斗」 「ーーー!だから、いつもではない、って!」 あー、なんか違う話題ないのか。俺は頭をフル回転させ、昼メシをどこで買うかの話題に誘導することに成功した。

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