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第9話-5

「悠斗」 唇と唇が離れ、大輝が俺の目を覗き込む。大輝の瞳の中に吸い込まれそうで、俺は息をするのも忘れた。 大輝の瞳は、一瞬だけ右下を向く。そして、もう一度、俺と目線を合わせて、はっきりとした声で言った。 「ずっと好きだったんだ。悠斗のこと。大切にします。俺と付き合ってください」 息が苦しすぎて、声を出すのにも苦労する。やっと出せた声は、掠れてスカスカになってしまった。 「…はい」 それでも、大輝は蕩けそうに笑った。俺の大好きな、目尻に皺をよせた笑顔で。 そして俺たちは3回目のキスをする。お互いの唇の感触を確かめあうかのように、長い時間をかけて。 4回目はきっと、ミルフィーユの味がするんだろう。

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