50 / 66

恋人編 第5話-2

「ピアノの伴奏って、サポートなんです。合唱だから、みんなの歌う声が主役。その主役を支える役。でも、だからこそ私は、伴奏が好きなんです。ひとりで弾くのもいいけど、みんなの為に、縁の下の力持ちになって、ひとつの曲を作り上げていく。それっていいなって」 琴音はちょっと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに言う。 すげーな、そんなこと考えながら弾いてるんだ。 そういや、なんか前に、同じよーな言葉を聞いたような… 「そうだ、一ノ瀬だ」 「え?」 「バスケ部のマネージャーやってるやつ。一ノ瀬 綾って名前なんだけどさ、『マネージャーの仕事って、プレーやってる主役のみんなをサポートする仕事で、でもそれがいいんだ』みたいな事言ってた。 なんかさ、全然やってること違うみたいなのに、実は同じよーな事考えてるんだなーって思ってさ」 「そうなんですね…なんか光栄です。運動部のマネージャーさんって憧れで。すごいなーって思ってたので」 もしかしたらここかもしれない。琴音の世界を広げる一歩は。 「な、次、一ノ瀬も連れてきていい?いいやつだし、サポート役どうし、気は合うかもしれないし。あ、嫌だったら無理にとは言わないけど」 「いえ、お会いしてみたいです。お願いしてもいいですか?」 すんなりオッケーが出た。よし、これで一ノ瀬を連れて来れる。そうすれば、大輝に誤解されなくて済むし。この調子で、大輝も連れて来れるかも。 これで少しは、琴音の交友関係も広がるかな。 「よっし!一ノ瀬に声かけてみるな。じゃ、また来るから」

ともだちにシェアしよう!