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恋人編 第5話-1

「…でさ、二回戦負けして、先輩たちが引退してさ、同じクラスの健(たける)ってやつが、新部長になったんだよ。そしたら部長になったとたん、『悠斗!おまえシャツ反対に着てるぞ!たるんでる!グラウンド10周!』とか言ってからかうわけ。マジさ、ひどいと思わねー?」 俺のどーでもよすぎる話に、くすくす笑う琴音。 琴音と昼メシ食べるのは、これで3回目だ。 琴音は、人に慣れるまで時間がかかるけど、慣れてしまうとすごく話しやすいやつだ。真剣に聞いてくれるし、いい質問を投げてくれるから、すげー話しやすい。 大輝には、琴音のことをまだ話してない。なんとなく言いづらくて、今日も、先生に呼ばれて、とか適当なことを言って出てきてしまった。 「あ、それ、次の曲の楽譜?」 「はい。いま、練習中なんです」 タイトルは『ひとつの朝』。歌詞もなかなかいい感じだ。 俺にはピアノ譜は、おたまじゃくしが泳いでるようにしか見えない。よくこんなん見て弾けるよな、マジすげー。

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