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幼馴染み⑩

靴に履き替えるため、すぐに腕は離された。 そして家路に向かって歩く俺たちに会話は無かった。 優時相手に居心地が悪いと思ったのは初めてだ。 「…良かったの?」 「ん?…なにが?」 「山下さん、さ」 沈黙に耐えれなくて、選んだ会話は言ってから失敗したな、と思った。 優時は相変わらず無表情だ。 「………」 彼女の名を口にした瞬間、胸がチクっと痛んだ。 「ん。いい」 優時の返事は素っ気ない。 そのまま、家に着いた。 学校からは俺の家が近い。優時の家はウチから3分ほどの距離だ。 家に入るのを、躊躇っていると優時の大きな手が俺の頭を撫でた。 「…また明日な」 今まで、何回も頭を撫でられた。 なのに、なのに、なんでこんなにドキドキしてしまうんだろう。 離れて、帰ろうとする優時の制服のシャツを掴んだ。 「…楓?」 自分でも、自分の行動がよく分からない。 …でも、離れたくないんだ。 ぐいっと勢いに任せてシャツを引っ張り、家の中に連れ込んだ。

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