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幼馴染み⑨

「や、やだな、そんなんじゃないよ。ねぇ?稲垣くん」 顔を赤くして一生懸命な彼女を見ると、小動物みたいで可愛くてつい、笑ってしまった。 ほんとに、優時が好きなんだな。 そんな山下莉子を見ていると、自分が惨めになってきて泣きそうになる。 「…んと、俺、帰るね。バイバイ」 どうにかして、早くこの場から消えたかった。2人を見てると、真っ黒いドロドロしたモノに飲み込まれそうだ。 「あ、うん。ごめんね、引き止めて。また明日ね」 チラッと優時を見ると、なんとも言えない表情でこっちを見ていたので慌てて目を逸らした。 「…俺も帰る」 「え…?」 優時の硬い声がしたと思ったら、腕を掴まれて歩き出した。 「え?優、時?ちょっ、」 「うん。またね、稲垣君」 山下莉子は笑顔のまま、俺と優時に手を振ってくれた。

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