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幼馴染み⑧

いつも、優時は俺の隣にいた。 俺には年の離れた兄ちゃんがいるけど、その兄ちゃんよりも多くの時間を一緒に過ごした。隣にいるのが当たり前だと思っていた。 保健室から戻った俺に、優時は何か言いたそうな顔をして見ていたけど、結局その日も話すことはなかった。 放課後には、山下莉子が迎えに来て一緒に帰るんだな、とぼんやり思った。 俺の居場所が、山下莉子に変わる。 寂しい気持ちは、幼馴染を盗られた気がするから? 優時は優しいやつだから、彼女を大切にするって分かってたけど こんなにも自分を蔑ろにするとは思わなかった。 自意識過剰もいいとこだ。 あぁ、俺って、いつも放課後何してたっけ? 昨日まで、何してたっけ? とぼとぼと下駄箱に向かうと、先に教室を出た優時と山下莉子がいた。 思わず、回れ右しそうになる。 「…あれ?高山くん、だよね」 可愛い彼女に似合う高めの声。 鈴の音のよう。 山下莉子の言葉に、優時も振り返ってこっち見た。 ただ、こっちを見ただけなのに、心臓が跳ねた。 「さっき体調悪そうだったけど、もぅ大丈夫なの?」 可愛く、小首を傾げる姿になんとか笑顔で応える。 「あ、うん。寝たら治った。あー、2人は…これからデート?」 自分で聞いて泣きたくなった。 声が少し震えたけど、気づかないで。 「え?」 心底驚いたような山下莉子の声。 大きな瞳がこぼれ落ちそうになってる。

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