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6 きっと今夜も凄いこと

 今朝もラグレイドは騎士の制服をきっちりと着込み、堅物獣人らしいポーカーフェイスで出勤して行く。 「いってらっしゃい」  俺は玄関でいつものように見送りをする。俺の方が出勤時間が1時間くらい遅いので、毎日こうして部屋着のままでのんびり「いってらっしゃい」の見送りをしている。 「ああ」  騎士は穏やかに目を細め、俺の髪を梳く様にして撫でてくれた。たぶん寝癖でもついていたのだろう。そうして俺の腰を抱くと、目蓋や頬や唇に口付けをした。 「行ってくる」  キスをされると俺はほわんとしてしまうのだけど、ラグレイドは違う。少し目元を緩めただけでいつもの騎士の表情となり、しっかりとした足取りで外へ出て行く。  ラグレイドは黒豹獣人の立派な騎士だ。強い攻撃魔力を持っていて、黙っていてもその身体から発せられる威圧感は半端ない。滅多に表情を崩すことがなく、肉食獣的獰猛オーラを醸し出しているから近寄りがたい。道行く人がラグレイドとすれ違う時には、ちょっと行く手を譲りながら歩いて行くのを見たことがある。  だけど本当は、夜はすごくエロいことをするんだぞあの人は。  精悍で毅然とした後ろ姿を見送りながら、俺はぽりぽりと腹を掻いた。腹にはいくつもの小さな紅い痕がある。昨夜もラグレイドにいっぱい吸い付かれたからだ。胸元にもいくつかあるから、ここのところ毎日シャツのボタンを一番上まで留めねばならない。  跡を付けたらダメだと言っても、裸を見たら歯止めが利かなくなるらしく、「シオの身体が可愛いから」と言ってなかなか止まらない。首筋に跡を残すことは減ったから、まあいいんだけど。  あの晩、あのネグリジェは結局互いの色々な体液でひどく汚れてしまった。けれど幸いどこも破れてはいなかったから、丁寧に洗って今はクローゼットの奥にしまってある。やはり普段は普通の夜着を着ようと思う。そのほうが落ち着いて眠ることができると思うからだ。  けれど最近になってラグレイドが「あれはもう着ないのか」と聞いてくるから、たまには着てみてもいいかもしれない。でもその時はまた凄いことになってしまうだろうから、覚悟を決めて着なければならない。 「シオさん、よかったらこれをあなたにあげます」  仕事の合間の休憩時間、またまた隣の机のクタさんに妙に軽い箱をもらってしまった。 「新品なので安心してください。自分はしばらくは使う気分ではないので」  デジャヴだろうか。こんなことが数日前にもあった。 「こっ、これは・・・っ、もしかして、中身は・・・?」  クタさんはあくまで真面目な顔つきで、大きく一つうなずいてみせる。 「職場では開けない方がよいモノです」  やっぱりかーっ!   いったい何をくれたんだ。気になり過ぎて落ち着かない。またえっちなネグリジェとかだったら困るなあ。あんなものをいくつも持っていても、ラグレイドを興奮させるだけだ。 「実はちょっとだけなら覗いて見ても大丈夫なモノです」  隣りでそわそわする俺を見て気の毒に思ったのか、クタさんがそう言ってくれた。  それでこっそり箱の中を覗いてみたら、茶色いかわいい猫の耳が見えた。 「おもちゃのネコ耳なのです。実は商店街のくじ引きでもらってしまったものなのですが、」  自分はもう持っているので。  こっそりとクタさんがそう教えてくれた。  なるほど、獣人の間でも遊び心でこういうものを着けたりするということか。  終業後、宿舎の部屋に帰ってから、俺はさっそくもらった箱を開けてみた。  ネコ耳はカチューシャのようになっていて、本物のようによくできている。しかもモコモコのパンツまでついていた。もちろんお尻の部分には猫のしっぽ付きだ。  こういうものを着て見せたら、ラグレイドはまたきっとすごくびっくりするんだろうなあ。  興奮して、いつもの冷静で穏やかなラグレイドではなくなって、ひどく熱い瞳で俺のことを見るのだろう。  あの夜、俺は初めてラグレイドがイクところを見た。  獣人の射精は人のそれよりも随分と長いものらしい。噴き出す精液をなかなか止めることができず喘ぎながら俺の手を握り、耐えるようにして苦しげに、それでいて艶やかに呼吸を乱す獣人の姿がそこにあった。  俺は他人が射精する姿を目の前で初めて見たのだけれど、魅入ってしまって目を離すことができなかった。  普段は真面目そうにしている騎士が、俺の前でだけあんな風に、あられもなく色に溺れて目元を染める。  ・・・・たまにはいいのかもしれない。  またラグレイドが俺の前でイクところを見てみたい。  ラグレイドは見た目はポーカーフェイスだけれど、本当はかなりのスケベな野郎だから、きっとすごく歓んでくれるのに違いない。  今夜はこれを着てみようか。         

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