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第1話

 そいつは小5の夏休み明けに転校して来た。  くりっと丸い黒い目が大きくて、リスみたいやと思う。 「どっから来たん?」 「おんなじ大阪や。前は豊中に住んどった」 「豊中? 上のほうやんな?」 「アホ、北のほうって言うんや」  両隣りの席の二人がさっそくそいつを構っている。 「伊丹空港の近くやってん。飛行機、よーさん見えたで」 「飛行機か、ええなあ」 「でもうるさいで。淀川も近かったな」 「あ、知ってる。花火大会あるとこやんな」 「うんそう。ここらへんは何があるん?」 「めっちゃ大きい公園あんで。石の滑り台、10人くらい並んで滑れるやつ」 「そうそう。木のアスレチックゆうの? なんかロープのジャングルジムみたいなやつもあるねん」 「そこでおにごするん、めっちゃおもろいで」 「ええなあ。行きたい」 「放課後、遊びに行こうや」  早くも遊ぶ約束をするんを背中で聞きながら、ふーん豊中から来たんやと俺はそいつの言葉を素早く頭ん中になんとなくメモした。  大阪弁をしゃべるから全然転校生っちゅう感じはなくて、そいつは初日からめっちゃ普通にクラスになじんで、あっという間にクラスの人気者になっていた。

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