12 / 28

第12話

「猇が笑った。珍し〜…波留なんの魔法使ったの」 煙草を灰皿に押し付けながら清が笑ったこと珍しいと言い、波留にもたれかかり褒め始める すっかり懐いてしまった清を仕方なく全身で受け止めながら波留は、猇の笑った顔を貴重なものなのだと勘違いし目に焼き付けることにした すると猇は清に静かにするよう言い、踵を返すと先ほど清が座っていた椅子へと腰掛ける 「お前、お人好しとか言われるだろ。ひっでぇことされてんのによく礼が言えるな」 「え…あ、まぁ…。そうなんですけど」 確かに酷いことを彼等にされたが介抱して助けてくれたのも事実だ 「でも、猇さんは俺のこと助けてくれてしかいないし、お礼は言うべきかなって」 考え下を俯きかけながらも波留は正直な気持ちを猇に伝えると彼は静かに煙草を吸い、吐き出すと清に向かって悪役も顔負けの微笑で得意げに言い放った 「俺の方がこいつの中ではいい奴になってるみたいだな」 先ほどの印象からは想像のつかないその笑みに波留は恐怖を感じ、清の後ろへと隠れてしまう そんな波留の行動を見て清が反抗するかのように得意げに笑うと猇を煽りだす 「猇くんのその顔のせいで今までの行いぜ〜んぶおじゃんになったかもよ〜」 「はぁ!?んなわけあるか、馬鹿のがまだ好感度低いだろ」 「好感度とかそんなもん俺の方がちょちょいのちょいで追い越してやります〜」 「はっ、現状最下位がほざいても怖くねぇわ」 子供の言い争いのような煽り合いを眺めながら波留は仲が良いと呑気なことを口にする 2人は口を揃えて否定するがそんな姿ですら仲が良いから言えることだと思えてしまう 一通り煽り合い落ち着くと猇が清にきちんと説明をしたのかと聞いており、波留は首を傾げると清が改めて自分たちについての話を口にする 「そうだった。波留が可愛かったからすっかり忘れてた」 どうしてそんな言葉がスラスラと出てくるのだろうと恥ずかしく思いながらも波留は黙って清の話を聞く 「改めて簡単に自己紹介すると、俺は御子柴 清でこっちの怖いのが宇賀神 猇ね。俺達は“羽柴会”ってところに所属してて、さっきも言った通りあんまり表の人間には良く思われてない世界の人間で波留が普通に生きてたら関わることのない人種だね」 「てめぇが勝手に巻き込んだがな」 「うっさい。それに関してはこれから懺悔して生きてくわ」 横から茶々を入れる猇に釘を刺すと清は話を続ける 「まぁ、猇がきついお灸添えたから波留はこれからも表で生きてく事は全然問題ないと思う…だけどさ」 さっきまでヘラヘラと笑っておちゃらけていた清は真っ直ぐに波留の顔を見つめると真剣な表情で尋ねた 「波留って帰る場所、きちんとある?」

ともだちにシェアしよう!