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第11話

「げ、猇…」 波留を押し倒したまま清が猇という男に向かってバツの悪そうな表情で答えると波留を布団で覆い隠した 「昨日したこと、忘れたわけじゃねぇよな?誰がそのケリつけて着てやったんだ?」 相当怒っているのか布団越しでもピリピリと殺気が伝わってくるのが分かる 「そんな怒んなって。禿げんぞ」 彼にとっては日常的なことなのか全く響いてない清はベッドの上で胡座をかくとそう答え煙草の残りを吸いだす そんな様子を布団の端から顔を覗かせて見ていると不意に怒っている男の方と目が合う 高身長に鍛え抜かれた身体に射るような鋭い目つきとその低い声が印象的で清とはまた違った魅力を持ち合わせていた 「お前、身体は?いてぇだろ」 崩れた髪を片手でかき上げながら歩を進め隠している清を押し退けると波留に向かって問いかける 完璧に整えられたその姿に波留の心臓が大きく跳ね顔が自然に赤らんでく 「だ、大丈夫です…」 小さく蚊のような声で答えると猇は波留の頭を乱暴に撫で無理すんなよと言い、横に居る清に向かって再度唸り叱りだす 「馬鹿が治ったかと思ったら性懲りもせずに手でしやがって…てめぇの尻拭いしてこっちは疲れてんだよ。余計なことすんな」 耳を塞ぎながら聞こえないふりをする清に頭を抱え大きなため息を吐くと、彼の頭を小突き満足したのか胸ポケットから清とは別の種類の煙草を取り出す 「…お前、タバコとか平気か?」 火をつける寸前のところで猇は確認をとるかのように波留に対して断りを入れ、思わず反射的に答えてしまう 「だい、じょうぶ…です!」 どうして2人とも自分のことを気にかけてくれるのだろうかと考え、互いの顔を交互に見ながらその整った姿に落ち着かない 猇は波留に短く礼を言うとサイドテーブルに置かれたジッポライターを手に取り火をつけた 「俺のライター持ってったのやっぱりお前か」 「いいじゃん。どうせおんなじ家にいるし」 「阿呆。俺んだろが……ったく、返しやがれ」 そう言って自分の胸ポケットへとライターを戻すと煙草を咥えて部屋を出て行こうとする (そうだ、この人が介抱してくれたってさっき清さんが言ってた!) 「……あ、あの!」 痛む身体をなんとか起き上がらせながら波留は部屋の扉に手を伸ばす猇に声をかけると彼は、こちらを向き煙草を片手に持ち変え扉に背中を預けながら波留の次の言葉を待ってくれる 「介抱してくれて…ありがとうございました。それと、服も貸してもらって…」 すると猇は思わぬ礼にふはっと吹き出すと構わないと短く返事をすると目を細めて笑った

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