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第28話〈猇視点〉
ガチャリと扉が開き、誰かが帰ってきた
誰かは言わなくても解る……
「おせぇ。……って、やっぱり持って帰ってきたのかよ。」
ばかキヨだ
しかも、持って帰ってくるなって言ったにも関わらず言いつけを破って腕の中にシーツ一枚の波留を抱いている
「猇 、この子の薬抜いてあげて。…俺持ってくるので疲れた。」
そう言うなり、苦しそうにする波留を俺に預けてきた
「薬だぁ…? 全く、何突っ込んだんだよ。…てか軽いな。」
仕方なく受け取った俺は綺麗に整ったその顔を見て、うんざりとしながら言う
「即効性の媚薬。…鹿島が入れたんだけど、途中で俺が追い返したから…」
「ほー、追い返したのか…。」
珍しいと思った。
こいつは時折そういうのに出かけては行くが、追い返したり怒ったりした事は一度もない
「なんか…ムカついた。」
「自分にか?」
そう尋ねるとキヨはこくりと頷いた
「わかりゃいいんだよ。…で、中は?出してんのかよ」
「うん……あと、口の中も…。」
(そらひでぇな…。)
無造作に口の中に手を突っ込むと、ドロッと何かが指に絡みついた
「……ねぇ猇。」
いつもなら俺を見てニコニコ笑うキヨが下を向いて呟くように言う
「……ついて行ったの後悔してるかも。」
「じゃ、今回の一件でこういうのはやめろよ」
「そうする…。…ごめんね。波留。俺、ちょっと頭冷やすから。」
俺の腕の中で、頬を赤らめて苦しそうにする波留に向かって、謝罪の言葉を口にした
(そんなキヨに免じて俺が責任取ってやるか…)
「ついでに風呂も入れとくから。お前はちょっと落ち着いて来い…」
「うん。…ありがと、猇 。」
(じゃ、いっちょやりますか…)
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