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第6話

 ジェラルドは宰相ゆえに自分の執務室を城の中に持っている。めったにないが、緊急時には王と共に城に詰めて国と民を守る為だ。執務室に入れば二人の青年が作業をしていた手を止めてジェラルドを迎えてくれる。 「お帰りなさいませ」 「お疲れ様でございました」  柔らかく微笑むのはジェラルドが将来を期待して目をかけている宰相補佐の青年達だ。お帰りなさいと声をかけてジェラルドの持っていた資料等を受け取っているのは、武官の方が向いているのでは? と見る人々に思わせる立派な体躯を持ったリオン。茶の短髪に茶の瞳を持つ彼は国王であるアルフレッドよりも三つほど年上ではあるが政治の世界では年若い部類に入るであろう。リオンは交渉に優れており、人間関係もそつなくこなすおかげで敵は少ないので表の仕事を任せることが多い。  そんなリオンの横に立ちジェラルドに紅茶を入れて労わってくれるのは、リオンとは正反対に華奢なシェリダンだ。仕事の邪魔にならないように顎のあたりで切りそろえられている銀の髪は真っ直ぐで、けぶるような菫の瞳はどこか冷たさを感じさせる。鍛えても筋肉が付かなくて、と本人が苦笑するようにスラリとした四肢は男らしさをあまり感じない。背も平均より少し小さいので、平均よりも高いリオンと並ぶと頭一つ半差が出てしまう。頭ではわかっているが言葉にするとどうしても硬質的になるため口を開くことを嫌うシェリダンは交渉等人と関わることには向かないために、書類作成や裏付けといった表にいく前の仕事を任されていた。交渉事が苦手ではあるが、ジェラルドが目をかけるだけあって彼も優秀であり、仕事は早い。因みにシェリダンはリオンよりも年下で、確かアルフレッドの一つ下だったとジェラルドは記憶していた。もう一人別の省で下っ端ではあるがシェリダンよりも更に一つ下の者がいるため最年少ではないが、それでも若いことには変わりない。

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