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第7話

「先程後宮管理省のジルア殿が来られておりましたよ」  先程まで会議であったので当然リオンの言うジルアは最高責任者の名前ではなく下っ端執務間の名前だ。 「こちらを」  横からスッと差し出された書類を受け取る。差し出したのはシェリダンで、いつものことながら双子のように無言の連携が上手に出来ている。 「わざわざ書類にしてもらわなくてもこの程度であれば常に把握はしているのだがな」  ざっと書類に目を走らせたジェラルドはそれ以上深く読むことはなく机の上に書類を置いた。内容は先程会議でも取り上げられた後宮の満室の件だ。 「そうおっしゃらずにジェラルド様」 「執務はお堅い物事で溢れかえっておりますので」  リオンが肩を竦めて宥めれば、シェリダンが事実をオブラートに包むことなくズバリと言う。特に最近は後宮管理省からの書類が山のように送られてくるためジェラルドも二人も苦笑しか出てこない。しかし、そんな後宮問題からももう少しで解放される。いくら側近の二人とはいえ水晶の儀のことを話すことは出来ないので、ジェラルドは笑みを零すだけに止めた。水晶の儀が終わってつつがなく初夜が迎えられれば、四日後には終わった終わったと、二人と一緒に笑うことも出来るだろう。  ジェラルドが会議に行っている間も休まず仕事をこなしていたであろう二人を思って、少し休憩にしようかと言えば同じタイミングでの頷きが返される。  二人の父親もそれなりの高官として勤めている。かなりの無理を言ったが、それでもこの二人を側に置いていてよかったとジェラルドは微笑んだ。優秀な彼らは自分の子供のように可愛い。  あともう少し。あともう少しで後宮の問題は片付く。そのことで多忙を極め、満足に家に帰して休ませてやることが出来なかった詫びに、すべてが終わったなら何か美味しいものでも食べさせてやろう。きっとリオンは大げさに喜んで、シェリダンはほんの僅かに微笑んでくれるだろう。そんな近い未来を楽しみにしてジェラルドは先程シェリダンが入れてくれた紅茶に口を付けた。

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