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第7話

「稜光様……今だけは、僕をあなたのものにしてください」  この先どんな運命が待ち受けていようとも、一度でいいから彼に抱かれたかった。抱いてほしかった。 「安心しろ、ソラ。必ず添い遂げようぞ」 「ありがとうございます。まるで夢のようなお言葉です」 『運命の番』に出会えた喜びと、決して結ばれない自分たちの未来。  零れていた涙を稜光に拭われて、ソラは初めて自分が泣いていたことに気づいた。 「泣くな、ソラ。どうやら俺はそなたの涙に弱いようだ。胸が軋む」  苦しげな表情をした彼に、ソラは涙を拭いて微笑み返した。  端整な顔が近づいてきて、おとなしく目を閉じる。  生れて初めての口づけは、想像していた以上に優しくて、温かくて、そして甘かった。  稜光の舌が唇をなぞり、それに応えるようにあわいを開く。 「ん……」  熱いほどのそれはソラの歯列を辿り、顔の角度を変えて深度が増した。 「ふ……ぁ……」  戸惑う舌を絡めとられ、先端を緩く吸われる。  ざらりと触れ合った表面に、肌が粟立った。 (こんなの……知らない……)  熱い身体がさらに火照る。  稜光への愛しさと、彼を全身で感じたいという欲望が、どんどん膨らんでいった。  愛の営みとはどのようなものか? 将来国王の妃となる身だ。ソラだって子をなすために、春画を使って学んできた。  しかし春画には、このようなことは書いていなかった。  愛しいという感情が、さらに欲情を煽ることを。 「あぁ……だめ……」  前を寛げられて、まだ何者にも触れられたことのない乳首が露わになった。  恥ずかしくて両腕で胸を隠そうとしたが、その腕を頭上でひと纏めに押さえ込まれてしまう。 「恥ずかしがっていては、互いを知ることはできぬ。美しいそなたのすべてを見せてくれ、ソラ」  先ほどまで自分の口内にいた舌が、過敏になった乳首に触れた。 「ひゃ……ん」  甘い電流が全身を突き抜け、ソラは逃げたい気持ちとは裏腹に、胸を突き出してしまう。 「あぁ……やん……っ」  ちゅっと吸われて、もどかしい熱が生まれる。  もう片方の乳首を指で捏ねられて、その熱はどんどん下半身に溜まり出した。  思わず擦り合わせた太腿の間で、自身が頭を擡げているのがわかった。 (や、やだやだっ! こんなの恥ずかしい!)  いつの間にか解放された手で、ソラは必死に口元を押さえる。そうしないと、自分でも聞いたことがないようなはしたない声が、出てしまいそうだったからだ。  外套を脱ぎ捨て、深衣の襟元を緩めた稜光が、ソラを見て口角を上げた。 「思う存分声を上げればいい。ここには誰も入ってこない」 「で、ですが……」  真っ赤になった目元で見つめると、稜光はソラの黒髪を撫で、触れるだけの口づけをしてくれた。 「そなたの声がたくさん聞きたい。そなたを啼かせるために愛を施しているのに、黙っていられては悲しすぎる」 「は、はい……」  この言葉に、全身の力がふっと抜けたソラは、おずおずと稜光の首に腕を回した。 「ど、どんなはしたない僕でも、好きでいてくれますか?」  ソラの問いに瞳を見開いた稜光は、次の瞬間蕩けるような笑みをくれた。 「あぁ。どんなソラでも愛している。だからそなたのすべてを見せてくれ」

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