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第2話
「...明日、学校休もうかな」
ため息混じりにそう言うと、根津はまた俺の頭を撫でてくれる。
「やめろ。渋谷の事だから、倍返しどころじゃすまねーぞ」
さらりと恐怖を煽る事言うし。
「だって!ただのババ抜きの罰ゲームなのになんでこんな怖い思いすんの?」
「んー、まぁ、ただの罰ゲームだからそんな怖い思いしないかもよ?」
とか言うくせに、その顔は苦笑だ。所詮、他人事なんだ。そんな根津をジト目で睨み上げ、俺は靴を取り出し、変わりに上靴を仕舞う。
俺はいつも根津と帰る。時々、部活のない河田や山中とも帰る。渋谷はいつもフラフラしていて、見る度に違う女の子と一緒にいる。
それを思うと、きゅんと胸が痛くなった。
「お前も物好きだよな。あんなんに惚れてるんだもんなー」
さらっと爆弾を落とす根津に俺は慌てて口を抑えようとするが、悔しい事に根津も渋谷とそう変わらない身長の為かわされると俺の手は届かない。悔しくて思いっきり足を踏んだ。
「いでっ!」
「もぉ!誰が聞いてるか分かんないだろ?」
プンスカ怒る俺に、根津は口だけの謝罪を述べた。俺の怒りは幼馴染みの根津には効かない。
「だってよー。真実だろ?渋谷って言えば顔は良いし何気に頭も良いし愛想も良いから人気あるっつーか、女にモテモテだけど ドSっつーか、悪魔っつーか、ドSっつーか」
...紛れもない真実だ。渋谷って言えば?の質問に対して100点の答えだ。ドSが2回。
「...イイトコある」
「まぁ、いい奴だよ」
根津は優しく微笑むとまた、俺の頭を撫でた。俺の頭は撫でるのにちょうど良い位置らしい。俺は俯いていて、根津に髪の毛をボサボサにされるがままだ。
中学生の時の塾の帰り道。いつもより遅い時間になってしまい慌てていた俺は怖い人にぶつかってしまい、暗い所に連れ込まれそうになった。怖くて泣きそうな所を助けてもらったのだ、渋谷に。そしてそんな少女漫画みたいな展開に単純にも俺は恋に落ちてしまった。偶然にも高校で再会した渋谷は、俺の想像したはるか斜めをいく男だったけど、それでも根底の優しさは変わらない...はずだ。
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