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第3話

「はい、これ」 そう言って笑顔の渋谷に渡されたのは紙袋だった。 「...ん?」 首をかしげながら受け取り、中身を確認する。...そして、固まる。 「あ、昨日言ってた罰ゲーム?何?中身、何入ってんの?」 固まる俺の後ろから、河田と山中がのぞき込んでくる。 「わぉ!何、これ!」 「ぎゃはは!マジ、ウケる」 大笑いしながら山中によって紙袋から取り出されたソレは……セーラー服だった。 「これで俺とデートしてよ」 意地悪く笑う渋谷の言葉の『デート』という甘い響きに心震える。 いやいや、落ち着け俺!!デートっても、女装だぞ?スカートだぞ?男の俺がだぞ?頭の中で想像して吐き気が襲ってくる。 「い、嫌だっ!!」 「はーい、拒否権有りませーん。罰ゲームでーす」 「…っ!根津!!」 馬鹿笑いしてる河田と山中は無視して、呆れ顔の根津に助けを求める。 「んー、なんで女装?」 「だって、きぃ可愛いから似合うと思って」 「本人泣きそうじゃん」 「そこも堪らないよね」 「……」 「ね、根津っ!!」 渋谷はニコニコと、根津の小さな抗議もスルーしていく。俺は根津の腕にしがみついてなんとか頑張ってもらおうとしたら、にゅっと伸びてきた手に腕をつかまれて根津から離された。 「わっ!」 引っ張られて落ち着いた先は、渋谷の腕の中で。触れた体は想像以上に逞しくて体が強ばった。 「きぃは、ほんと根津が好きな」 いつもより低い声が降ってきて、思わず顔を上げると、いつもは意地悪な笑みを浮かべる渋谷の表情に驚く。笑みは浮かべているものの、瞳が笑っていない。 「...渋谷?」 「...ん?なに?」 見間違いかな。いつもの意地悪笑顔の渋谷がそこにいた。 「お着替えしようね、きぃちゃん」 渋谷が優しいって、俺の思い込みなのかもしれない。

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