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第4話
自分の非力さを呪います。
俺の抵抗むなしく、あれよあれよとセーラー服に着替えさせられた。しかも、なんかサイズぴったりだし。
「わー、希壱似合う。お前、姉ちゃんか妹いないか?紹介してくれ」
「いねーわ、クソ」
「すげ、希壱、足細いな!そんで、違和感ねーのがウケる」
「うん。似合う」
意外にも好評ですが、俺は早く脱ぎたくて堪らない。スカートって、足がスースーするし、なんか心もとなくて不安だ。世の中の女子の皆さん、すごいっす。
チラリと黙っている渋谷を見る。着替え終わってから騒がず大人しい渋谷に軽く恐怖も覚える。
…笑えないくらい酷いかな。
似合わないのは分かっているけど、何も言えなくなるほど引かれるのも困る。
「...渋谷?」
黙ったままの渋谷のシャツをくいくい引っ張ると、こっちに顔を向けた渋谷は瞬時に真っ赤になった。
「おまっ...!」
「似合わねーのは分かってる」
罰ゲームだから...渋谷が着ろって言ったから嫌々だけど覚悟決めたのに。ぶーたれた俺に、渋谷は顔を赤くしたままするっと後退した。俺の手から逃れるように。
...やば。触られたの嫌だったかな。
そう思うと、一刻も早くこの服を脱いで帰りたかった。悲しかった。
「...脱いでもいい?」
「...あ、いや、うん、想像以上に似合っててびっくりしたわ」
笑う渋谷に、俺も俯いたまま笑った。なんでこんな格好してるんだろ。恥ずかしい。スカートの裾を握って笑う俺の頭を根津が何かを察したのか撫でてくれる。顔を上げると、優しく笑う根津がいて気持ちがちょっと楽になる。
「...デートするから脱いじゃダメ」
いつものようにおちゃらけた声が聞こえるが、その声は硬い。
「...え?本気だったの?」
「当たり前だろ。行くぞ」
「ふ、2人?」
「だって俺、勝ったし」
「で、でも...」
3人に目を向けると手を振りながら見送られる。なんて薄情な!ってか、大勢いた方が女装してる俺は目立たないのに!!
そう表情に出ていたのだろう俺に向かって『部活』『部活』『彼女と約束』だと言ってきた。
「ほら。行くよ、きぃ」
ぐぃっと腕を引かれて歩みを促された俺はおとなしく渋谷についていくしかなかった。
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