18 / 22

第18話

グッと俺を抱きしめる渋谷の腕に力がこもる。それに思わず体が強ばってしまった。 「はぁ?誰だよ、それ」 「えー?ひどーい。舞、渋谷と付き合ってるって言ってたしー」 「可哀想~。彼女もやめときなよ、こんなチャラ男~」 きゃははと笑う彼女たちに、可哀想と思われてる友達が可哀想だと思った。 そして、イラつく俺。 顔を上げることができないから、抱きついている渋谷の背中をつねる。余分な肉なんてないから少ししかつまめないけど。痛いと思うけど。 「いてっ!...こら」 軽く窘める程度で、渋谷は俺の髪をつんつん引いて甘く抗議した。 面白くなくて、ぎゅうぎゅうと強く抱きついて圧をかけるけど、渋谷は気にすることなく俺の頭を撫でている。 「...ねぇ。マジなの?」 その様子を見ていた女子の1人が信じられないというように聞いてきた。 「あ?」 すでに渋谷の興味は彼女たちには無く、まだ居たのかと態度が語っている。 「...渋谷、本命作らないって...」 「誰とでも遊びだって…」 「やりちん...」 「おい!誰だ?最後の!」 「...ぶぶっ!」 「笑うな」 思わず笑ってしまい、ぶーたれた渋谷に頬を軽く抓られる。すぐに離れた手は優しく抓った頬を撫でるから甘さに眩暈がする。 いつもと明らかに様子の違う渋谷に、彼女たちはお互いの顔を見合わせて戸惑っている。

ともだちにシェアしよう!