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第17話

「...可愛い。でも、言葉で伝えて。さっきの仕草も可愛いけど」 意地悪な顔して笑うけど、瞳は優しくて。 俺は口をパクパクして、でも、言葉がでてこなくて。 ぎゅっと、渋谷の服を握りしめると、ちゅっと、渋谷の唇が目尻へと触れる。 「...ばか。人 いるだろ。」 「さっきから ちゅっちゅっしまくってんじゃん」 「...ばか」 「うん。俺、ばかだから気にしない」 笑いながら渋谷の顔が近づいてきて、俺はゆっくり瞼を閉じー... 「渋谷!?」 女子の高い、悲鳴に近い声でカッ!と目を見開いた。 「...あぁ?」 邪魔されて不機嫌な渋谷の声。いつも、ヘラヘラしている渋谷にしては珍しい。チラッと横目で確認すると顔は分からないがうちの学校の制服が見えた。 やばっ! とっさに、渋谷に抱きついて顔を伏せる。 「やーだ!イチャつくバカップルがいると思ったら渋谷じゃん!あれ?うちの制服?誰?」 相手は2、3人いるようで左右からスピーカーのように声が聞こえる。 誰?なんて聞かれて顔を上げられる訳が無い。バレたら俺の高校生活真っ暗だ。 渋谷が俺の顔を隠すように片手で抱きしめる。不本意ながら、ときめいた。 「うるせーな。イチャついてんだから気遣って向こう行け」 「えー?いいじゃん、紹介してよ!」 「舞には黙ってるから」 女子のそのセリフに、体が揺れる。 ...舞って、誰だ? そうだ。こいつ、見る度に隣にいる女が変わるクソ野郎だ。 瞬時に今まで感じたことがない程の怒りを感じた。真っ黒い感情。

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