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その後しばらく眠ってから、麗は獅琉に体を優しく揺すられて起こされる。
「麗、起きろ」
ぅう...まだねむたいのに...
獅琉にふわふわの白い髪を撫でられて、なんとか目を開けると、獅琉が枕元に座っている。
「しー...」
「あ?起きたか?」
大好きな獅琉の顔を見て嬉しくなる麗だが、獅琉の格好を見てその気持ちはみるみるうちに萎んでいく。
しー、スーツきてる...きょうも、おしごとなの…?
「しー、きょう...おしごと?」
「ああ、本家まで少し。ここで大人しくしてろよ。」
獅琉が家に居ない間、麗は部屋から出ることは出来ない。
「ん...しー、はやくかえってくる?」
「んー、分かんねーな。」
獅琉は何て事ないように話すが、これは麗にとっては大きな問題である。
麗にとって一人ぼっちで獅琉の帰りを待つ時間は何より辛い。
立ち上がって家を出る準備を始めた獅琉に寂しげな視線を送るが、獅琉が気付くことはない。
10分程して獅琉は
「行ってくる。脱走するなよ。」
とだけ言い残し、涙が滲み始めた麗の瞼を親指で一撫でしてから、部屋から出ていった。
脱走なんて、するはずないのに...
僕の世界にはしーしかいないのに...
「…さむい」
1人広い部屋に残された麗は、再びベッドに横になり、真っ白のシーツに埋もれるように丸くなった。そしてそのままじっと、いつになるかわからない飼い主の帰りを待つ。
はやく...かえってきて...僕の大好きな飼い主さん...
麗の瞳から一筋、真っ白な頬に涙が伝った。
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