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そうして獅琉が育てることになった真っ白な子は《麗》と名付けられ、大切に大切に育てられた。 日光が苦手な麗は、部屋の外に出ることもほとんどなく、組の中でも麗の存在を知っている者はごく僅かだ。 麗は親代わりである獅琉によく懐いた。 獅琉とすごく時間が何よりも好きで、獅琉がいないと麗はたちまち不安定になる。 一方獅琉の方も、麗と出会う前の心身共に乱れていた生活を捨て、麗の為に毎日を過ごした。麗が泣けば真っ先に駆け付けて抱き締め、麗が笑っていれば一緒に笑う。 2人は、お互いにとってなくてはならない存在となった。 勿論山瀬の言う通り、人を育てると言うのは簡単なことではなかった。失敗したことも、山のようにある。それでもヤクザという特殊な環境の中でも麗は、純粋なまますくすくと育ち、気が付けば東雲組に迎えられてから、14年の月日が経っていた。 獅琉がぼんやりと昔のことを思い出していると、抱き締めたままだった麗がもそもそと動き出した。麗の綿菓子のような髪が首筋に当たって少し擽ったい。 あの時の栄養失調のせいで体は大きくならなかったけど...かわいいから、いいか。 「しー、しー」 「んー?」 腕の中で何度も名前を呼ぶうさぎに返事してやると 「うぅ...さみしかった...しー...」 と言って獅琉の服を小さな手できゅっと掴む。 寂しがりはいつまで経っても治らない麗。 食事や睡眠も獅琉がいないと満足にとることができないでいた。 「はいはい。麗、腹減ってないか?」 「おなか...すいてない...」 小さく首を振る麗を咎めるように獅琉は言う。 「あ?またお前何も食わない気だろ。」 「やぁ...しー...」 「やじゃねーだろ。何か腹に入れろ。」 「ううぅ...」 何も食べないと愚図る麗を抱き上げて部屋に備えてあるキッチンに向かう獅琉。 「お前軽すぎ。ちゃんと食わねーと大きくなれないっていつも言ってるだろ?何が食いたい?」 獅琉が麗を守ると決めたあの日の誓いは、14年経った今も変わることはない。

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