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「柚木、車は家に回せ。」
「えっ?病院じゃないんですか?」
「いいからさっさと出せ。あと、山瀬呼んでおけ。」
「はい。」
獅琉はてきぱきと柚木に指示を出して、赤ん坊を抱いたまま座席に座りなおした。
俺に手を伸ばしたのはお前だからな...
車が家に着くと、玄関の前で眼鏡の男が立っていた。
男は車に寄ってきて、降りてきた獅琉に話しかける。
「話は柚木くんから聞いてるよ〜。その子が患者さんかな?」
「ああ、診てやってくれ。」
「了解、獅琉の部屋でいい?」
「ああ。」
赤ん坊を抱いたまま自室に向かい、ベッドの上に寝かせる。
「山瀬、頼んだ。」
山瀬に赤ん坊の診察を任せて、立ったままその様子をじっと見つめた。
山瀬は一通り赤ん坊を診た後、何やら器具を取り出して治療を始める。
こいつ...死んだりしないよな...
獅琉が心配でイライラし始めた頃、やっと全て終えたのかくるりと山瀬が振り返った。
「一応、終わったよ。栄養失調がひどいみたいだから、しばらくは点滴で様子を見よう。でもこの子、アルビノだから元々体は強くないし、いつ急変してもおかしくない。それと、栄養失調のせいでこの先、成長に支障が出るかもしれないな...あと、」
「ちょっとストップ」
一気にしゃべる山瀬の言葉を一旦整理して、獅琉は尋ねる。
「とりあえず...死ぬってことは...」
「今のところないよ。安静にしてあげてね。」
既に片付けを始めている山瀬はにっこり笑って答えた。
「そうか...」
と安心した獅琉に山瀬は付け加える。
「この子をどうするつもりなのか、僕が聞くつもりはないけどこれだけは言っておくよ。人を育てるっていうのは決して簡単なことじゃない。生半可な覚悟でそんなことしたら、この子も獅琉も苦しむよ。」
「…分かってる。」
「そう、ならいいんだけど。それじゃ、何かあったらまた連絡してね。明日また点滴替えに来るから。」
そう言い残して山瀬が部屋から出ていく。
...覚悟ならこいつを家に連れて帰るって決めた時に腹くくった。この先、こいつに降り注ぐ全ての苦しみから俺が守ってやる。
ベッドに近づいて赤ん坊の真っ白な頬を撫でていると柚木が部屋の扉を叩いた。
「若、柚木です。」
「入れ。」
部屋に入ってきた柚木は獅琉に言う。
「その子のこと、一通り調べました。結果から言うと…何もわかりませんでした。出生届も出されていません。おそらく母親はあの女だと思いますが...」
「そうか...」
まあ、予想はしてたが...名前も分からないのか...
「柚木」
「はい」
「こいつに必要なもん、色々と揃えてこい。服とかミルクとか。」
「はい!」
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