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突然で失礼する。
――突然だが、浮気攻めというものは、実は可愛いものではないか?
受け相手に嫉妬してほしくて、構ってもらいたくて犯してしまう行為。
攻め自身の気持ちがまだ整っていなくて、つい他の相手に手を出してみたが、受けの泣く姿に本当の気持ちに気付いてしまう、あの瞬間。
そこからくるものは恐らく、溺愛というものだ。
あんなにチャラかった攻めが受け一途になり、クールでなにも言わなかった攻めが受けにだけ甘えたがりになり……束縛展開もいいだろう。
純愛からの狂愛。オイシイではないか。
しかし、この作者の作品はバッドエンドでいいんだろうか。
基本的にハッピーエンド主義である俺からすると少し物足りなさを感じてしまう。
まぁでも、これも一理あるのかな。というか後半はほとんど受けの語りで攻めの状況がわかっていない。
なんて、閉じた小説をまた開いてみて、一番最後のページを捲った。そこにあるのは、あとがき。
普段は小説にしても漫画にしても、あとがきというものを読まない。
なぜかというと作者自身の解釈と俺自身の解釈が違っていたら、それはそれでまた広がる創作ではあるが、同時に納得いかなかったらどうしよう――という意味のない心配をしてしまうからだ。
だが、この結末はどうしても気になってしまい、つい読み始める。
「ただ今、二人の後日を執筆中で……おぉ!いつになるかわからないが書いているのか。しかも攻め目線も入れていると……」
やっぱり俺の目を光らせた新人作家なだけあるな。ハズレがない。
ベッドの隅でニマニマとしてしまう表情を押し殺しながら心の中で暴れる俺は、木下 歩 。
全寮制男子校の高校二年生。毎日毎日美味しいホモを食っている幸せ者だ。
あ、食ってるのは妄想としてだからな。
そう、モウソウと、して。
だけどまぁ、その妄想として崩れた場合。そう、崩れた場合だ。
例えば妄想と現実があやふやになり、捕まる瞬間とか。妄想を現実で何気なく犯しちゃった瞬間とか。自分の妄想に自分自身を入れて、戯れる瞬間とか。
それって、普通にダメだろ?
共感が出来ない?
じゃあ出来なくてもいい。
俺の考えは俺で成り立ってるし、俺の考えた世界は結局俺で廻ってるわけだから、神様位置なわけだし?
あ、待って、危なくないぞ。俺は危なくない。ちゃんと割り切って生活している。
大丈夫だから。大丈夫なんだ――。
「先輩、飯塚先輩。お尻の具合どうですか?」
「……」
手に持っているビデオカメラの小型画面に映る飯塚 友樹 先輩と、枕で顔を隠している本物の先輩を交互に見ながら問う。
――突然だが、飯塚先輩を犯したばかりだ。
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