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駆け引き
僕の部屋にさっきの側近が来た。
「あぁ、挨拶はいい。普通に座って。早速だが侍医に聞いたら、今日君が抑制薬を取りに来たって。もしかして発情期が来てるの?」
さっきの威厳ある語り口より砕けた調子で驚いて言葉を発せずにいると、鋭い視線を向けられた。
「こちらが下手に出てるうちに話した方がいい。うちの陛下の何が気に入らない?泣いて喜ぶ奴ばかりなのに。」
剣に手は掛けられて居ないけど、迂闊な事を言うと切り捨てられそうな覇気を感じた。
「いえ、高貴な方に見染められて光栄ですが
僕は平凡そのもの。務まるかどうか不安で。発情期は昨夜から始まっていて今は抑制薬を服用しています。」
「そうか、ちょうどいい。なら、抑制薬を明日は止めて早速出仕してもらう。務め云々は大丈夫だよ、君は皇帝の子を産みさえすれば、お役御免だ。何なら番にならなくてもいい。こっちは子供が欲しいだけなんだから。愛や尊敬も要らない。それなりに礼も弾むし、欲しがるならそれなりの身分も用意しよう。」
決定事項を読み上げるかの如く話を進められそうなので、慌てて遮った。
「あの、僕、数日で帰れると思ったのですが…。」
「一旦帰りたい用事でもあるの?逃げないよう監視はつけるけど、番は作らないと約束出来るならいい。破った場合はお前だけでなく母親の命も…覚悟してね?」
断る事も、逃げる事も出来ないようだ。
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