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皇帝の気紛れ
翌朝、僕は自分の部屋で眠っていた。
着ている物は見覚えの無い綿の衣服で、身体もベタベタしていない。
天雨さんが、してくれたのだろうかと嬉しくなった。
起きようとすると、身体がグラついて力が入らないが、少し休んでから身支度を整え、遅めの登城をした。
官服を着た役人らしき人に名前を告げると驚いた顔で中へ入れてくれた。
「お前が流鶯か。早く皇帝陛下にお会いになるといい。」
もしかして、天雨さんが?と嬉しくなるものの案内された部屋で官服を着た役人の中にその姿はなかった。
孝慈帝は随分高い所に座っていて顔は良く見えなかったけど、服と冠がピカピカの金色だった。
「この流鶯が、今の所陛下の条件に合いそうなΩですね。顔も悪くはありませんし、私はいいのではと思いますよ。」
寝耳に水とはこの事で、僕は焦りながら言った。
「待ってください、僕なんかが皇帝の相手なんて、務まるはずがありません。」
役人達はザワザワし出した。
嫌味な言葉もわざと聴こえるように言われた。
「畏れ多くも、番は嫌だと。不敬罪ではないのか。」
「不届きな民だ。Ωの分際で何様のつもりだ。」
帝が手を前に翳すと会話はピタリと止んだ。
「まだ、顔合わせの段階です。この件はゆるりと詰めて参りましょう。」
側近らしき高官が言葉を発して場は収まったが、僕の頭は混乱した。
そして、役人達の冷ややかな視線に退出する時も生きた心地がしなかった。
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