12 / 12

side 天雨 「流鶯を庇い、死ぬかと思った。」 盗賊に襲われ、率直な感想を述べると側近はハンッと鼻を鳴らした。 「またまた、ご冗談を。かつては金狼と恐れられ、先の戦も10万の軍に13騎で斬り込み大勝利した貴方がよく言いますね。吊り橋効果で仲良くなれたでしょう。これも番を手に入れる為です。腕の一本や二本位でガタガタ言わないでください。」 「…腕は、二本しか無いがな。」 「細かい事は良いのです。それより皇帝で嫌われてもいいように天雨として保険を掛けておきたいなんて、慎重なんだか馬鹿なんだか。名君の誉れ高いαの孝慈帝、凱康輝(がいこうき)(あざな)天雨の貴方が随分な回り道をして…」 側近が悪態をつき続け尚も詰るが、黙って聞いていた。 左腕が動かない不自由さも、今は気にならない。 今夜は、もっと優しく抱いてやる。 終

ともだちにシェアしよう!