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不安だらけだった茉莉との再スタートは、智裕や智裕の母のおかげで楽しい日々を過ごせた。
そして春になって拓海は智裕と秘密の交際を始めて愛し合うことができた。
――出会ってからもうすぐ季節が1つ巡る。
今、拓海の大好きな人はテレビの向こう側にいる。自分だけのものだと思っていた笑顔はそうじゃなかった。拓海の知らない、智裕と肩を並べることができる人たちとも共有することに嫉妬を覚えてしまう。
だけどそんな醜い感情も消し去ってくれるのも。
ブー ブー ブー
「もしもし? 智裕くん、お疲れ様……うん、うん…ふふ、今見てたよ」
「拓海さん、今日さ俺テレビ出てたんだけど見てくれた? ほんと? ホントに?」
消し去ってくれるのも、大好きな人だった。
「あのね、智裕くん」
「ん?」
「俺がさ、今ここ引っ越してきてもうすぐ1年なんだよね」
「あー…まだそんなだったっけ? なんかもっとずっと一緒にいるような気がしてたから」
「あのね…智裕くん……」
思い出したこの気持ち、拓海はどうしても伝えたかった。
「俺たちと出会ってくれてありがとう…智裕くんがいてくれたから、俺もまーちゃんも今すごく楽しいんだ」
「……拓海さん、もぉ…ばかぁ…」
「へ?」
素直に伝えただけなのに意外な反応で拓海も少々戸惑う。
「そんなん言われたら会いたくなっちゃうじゃん…」
智裕が戸惑う理由が嬉しかった。そして改めて拓海は噛み締めた。
(智裕くんを好きになってよかった…)
「拓海さん」
「ん?」
「帰ってきたら、いっぱい…大好きって言わせてね」
想像しただけで心臓が持ちそうにない、だけど拓海は迷うことなく「うん」と快諾した。
「智裕くん、大好き!」
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