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2.めちゃめちゃ気になる

「智クンおはよー」 「智、風邪でもひいたんかー?」  教室に入ったら、友人から声をかけられた。オレは男子からも女子からも、智とか、智クン、果ては智チャンなんて呼ばれてる。そこまでチビってワケじゃないし、可愛いキャラってワケじゃないんで謎だ。まあでも嫌われてるワケじゃないんでいっかと思う。 「んー、ちょっと具合悪かっただけ。もう大丈夫」 「牛乳の飲みすぎで腹でも壊したかー?」 「るせーっ! 飲み慣れてるから腹なんか壊さねーって」  オレが途中で買ってきた牛乳パックを出しながら答えたら、クラスメイトの香山雅人がからかってきた。くやしいことにこいつはオレより背が高い。陸上部で、たしか走り高跳びの選手だったような気がする。 「背伸びた?」 「この前測りに行ったら168だった。春より3センチ伸びたぜ」 「えーずるい。今度オレも測りに行く!」  オレの牛乳仲間の高梨信一だ。示し合わせたワケじゃないけど、お互い毎朝牛乳を飲んでる。ついでに昼も飲んでる。オレは少しずつ背が伸びてるけど、こいつは夏休み前に測ったときは、全然伸びてなかったらしい。ちょっと優越感。でも、もしかしたら信一も背が伸びたかも。 「伸びてるんだ。そのうちに私より背高くなるかな」 「えー、智クンはそれ以上伸びない方が似合ってるよ」  今のは笹田梨奈ちゃんと渡辺愛理ちゃん。ふたり共バレー部で、愛理ちゃんはマネージャーをやってる。梨奈ちゃんは黙ってると冷たい雰囲気の美人。でも実際は世話好きで、ニコニコしてる方が多い。背も高いから女子にも人気があって、バレンタインデーはいっぱいチョコ貰ってたみたい。愛理ちゃんは小柄で目が大きくて元気いっぱいな子。美人って言うよりは、可愛いってカンジで男子の人気が高い。  この4人にオレと亮介の6人で、だいたいいつも一緒にいる。亮介以外は高2になってから仲良くなったヤツらだ。 「よぅ、元気になったみたいじゃん」 「お、おぅ……」  亮介が登校してきた。オレの頭をクシャっとやってから自席に向かって行く。途端に思い出す昨日のこと。あいつ何であんなことしたんだろ? キスなんて……。 「あれー智、何か顔赤くなってね?」 「オレ、ちょっとトイレ」 「ギャハハ、牛乳の飲みすぎはダメだぜー」  あー、オレどうしよ。昨日のこと思い出すとなんかドキドキしちゃう。  とりあえず、トイレで顔を洗ってから教室へ戻った。  その後はいつもと変わらない日々。休み時間になったら集まってダベって、昼もみんなでワイワイやりながら食べて、でもって放課後は解散。オレと信一以外は部活やってるから、授業が終わったら即行移動してる。  オレらの通う高校は所謂進学校ってヤツで、部活やってるやつの大半は、高2の秋に引退する。先生たちも、進学優先だから特に文句は言わない。引退って言っても、高3の夏くらいまでは、人によってはだけど、週に何回かは部活に参加してるみたいだし。 亮介は剣道部で次の試合が終わったら、陸上部の雅人は年末をもって引退することにしてるらしい。逆に梨奈ちゃんはバレーの強い大学を目指してるから卒業まで引退しないんだって。愛理ちゃんは既に引退してるんだけど、梨奈ちゃんと一緒に帰りたいから部活に参加してるとか。  何で亮介はあんなことしたんだろ? 気になるけど聞くチャンスが無くて、わざわざ電話して聞くってのも何か変だし、でもやっぱ気になって……。教室ではみんなと一緒だから普通に話すけど、少しぎこちなかったかもしれない。あー気になる。 「なあなあ、日曜って亮介の試合だろ?」 「おう」 「じゃあさ、みんなで応援行かね? その後カラオケとか行って、負けた亮介をみんなで慰めるってどうよ?」 「ひでぇ。最初から負けるって決めんなよ」 「さんせーい! 試験も終わったし、たまにはみんなで集まろうよ」 「井川クン頑張ってね。負けてもみんながついてるよ」  雅人の発案で、週末久しぶりにみんなで集まることになった。亮介も引退前の最後の試合ってことで気合入ってるし、オレも応援したいって思う。  帰る方向一緒だから、気になってること亮介に聞けるしな。  ホント、何であんなことしたんだろ? 今でもめちゃめちゃ気になってる。キスなんて……。

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