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4.何考えてるんだよオレは!
暗くなった道をふたり、肩を並べながら歩き出したオレたち。
「おまえさ、そばかすあるじゃん」
「おう……」
「その顔で笑うとさ、めちゃ楽しそうに見えるんだよ。で、それ見てると、何かむしゃくしゃしたことがあっても、そいつがバカらしくなるっつーか…」
「ハァ? それってオレが、何も考えてないノータリンってこと?」
「ちげーってば。智が笑ってると、周りもつられて笑顔になるっつーか。…オレ好きだぜ、おまえの笑顔」
「お、おう……」
なんだ? なんか話がヘンな方に行ってないか?
オレは色素が薄いっつーか、色白で顔にそばかすがある。そんなにたくさんあるワケじゃないのが救いだけど、あんまり好きじゃない。髪も目の色もちょっと茶色っぽくて、全体的に弱そうに見える。実はそれがコンプレックスだ。部活はやってなかったものの、密かに筋トレとかはやってる。だけど、そのわりには筋肉が付かなくて、それもまたコンプレックスだ。
「だからさ、智にはいつも笑ってて欲しい」
やっぱ話がヘンな方向に行ってるような気がする。むず痒いっつーか。
「亮介おまえさぁ、どうしちゃったの? さっきから何かムズムズすんだけど。ケツの穴がむず痒いっつーか」
「なんだ智、痔にでもなったんか?」
「んなもん、なってねーよ!」
ニヤリと笑った亮介。
そっからはまあ、普通にゲームの話とかして別れた。
しかし何だ? さっきのは何かヘンだったぞ。なんか亮介に告られたような、つーより、告る手前っつーか……。
んなわけあるか!
両手で頬をパシンとやって、オレはそのもやもやした考えを打ち消した。
試合が終わって亮介は部活を引退した。でも、オレと亮介が一緒に帰ることは無かった。
「何なの? 何なのアレ? 毎日毎日違う女の子と一緒に帰って!」
雅人がうらやましそうにブツブツ言っている。そうなんだ。部活を引退してから毎日、亮介は違う女の子と一緒に下校している。しかもそれが全員可愛い。
「うらやましいぜ。オレにもひとり分けて欲しい……」
雅人と信一とオレの3人は、一緒に下校しながら、前方に見える亮介カップルをうらやましそうに見ていた。いつもは部活に行く雅人だが、足首を捻挫したとかで今は休んでいる。
「でもさぁ、雅人だって背高くてかっこいいじゃん。バカだけど。そのうちに誰か告ってくれるんじゃないの? バカだけど」
「バカってなんだよ、バカって!」
信一と雅人のやりとりを聞き流しながら、オレは亮介のことを考えていた。
やっぱ……エッチとかしてんのかな?
エッチはしなくても、キスとかは普通にしてるんかな?
亮介モテるし慣れてるんだろうな。
そんなことを考えてたら、この前の亮介のキスを思い出してしまった。
顎に手をやって、クイっと上向かせたんだっけ。そして亮介の唇が……。
「あれー、智どうしたん? 顔真っ赤じゃん」
「えっ、な、なんでもないっ!」
う――、何であんなの思い出しちゃうんだよ!
でも……、亮介の唇、フニってしてやわらかかったな。
睫毛結構長かったんだ。
「オレちょっと用事思い出したから、先行くねー!」
雅人と信一を置いて、オレは駅へ向かって走り出した。
何考えてるんだよ、オレは!
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