「亮介センセ、昨日も聞きましたが、この体勢は何故？」 　昨日起きたときもこの体勢だったし、でもって今も。もしかしてお酒を飲むと、もれなく亮介にホールドされるのか？　いやいや、なんでだよ？ 「湯たんぽ智を堪能？」 　そう言って亮介はますますオレを抱きしめてきた。 　これってやっぱり昨日と同じく最終兵器発動？ 「おしっこ」 「少しガマンしてみよっか？」 　最終兵器撃沈。敵も学んでいるらしい。うぅ……。 「でもさ……、そろそろ起きない？」 「もうちょっと湯たんぽ智を堪能させて」 　昨日と一緒。フッて笑った息がうなじに当たる。うぉーい、やめてくれー。ぞわぞわって鳥肌が立って、身体が緊張しちまうじゃんか。 　なんかさ、オレも亮介もオトコだけどさ、こんな状況になったらドキドキするのって普通じゃね？　オレどうしたらいーのよ？ 「亮介センセ、なんか昨日からキャラ変わってね？」 「うーん、どうだろ？」 「いやいや、ぜってーヘンだって」 「それは智もじゃん。何？　亮介センセって……」 　その後しばらくオレは、亮介に人間湯たんぽにされたままだった。どーすんのコレ？　つーか、誰か何とかしてくんない？　そう思うけど、ここには亮介とオレしかいないワケで、しかもくやしいけど亮介の方がでかいワケで、結局抱きしめられたまま黙っているしかなかったんだ。 　心臓バクバクだよ。めちゃ緊張して身体はカチンコチンに固まったままだよ。 「智かわいい……」 　亮介のそんなセリフとともに、うなじに何か柔らかいものが触れた。 　それって……。うぎゃぁぁぁぁぁっ！ 「りょ、りょりょ亮介――ッ！」 　さすがのオレもパニくって、そんな声がでちゃったし。しかも涙目になってそう。 「湯たんぽサンキュ。んじゃ、朝メシ作ってるな」 　ようやっとオレから離れた亮介は、オレの頭をクシャっと撫でてから部屋を出ていった。オレは放心状態。ベッドの上に座ったまま、しばらく動けないでいた。 　うなじに触れた柔らかいものって……。ぎゃぁぁぁ――ッ！ 「智、朝メシ出来たぜ。…って、まだ着替えてなかったんか？」 「お、おう……」 　何事もなかったようにそう言われて、オレは慌てて着替えて台所に向かった。 　朝ごはんは、トーストに目玉焼きとベーコン、いちご、そしてコーヒーだった。コーヒーはオレの分だけ牛乳と砂糖入り。亮介はブラックを飲んでた。ちくしょう、ブラックが飲めるからって羨ましくはないぞ。 　ふと目をやったら、目の前の亮介はめちゃ機嫌が良さそうに見えた。やっぱりおかしい。いや、機嫌が良いのは別に良いんだけど、普段の亮介のイメージってクールってカンジなんだよな。でも今の亮介はニコニコしてて、クールとは程遠い雰囲気。 「なあなあ、やっぱどうしちゃったの亮介？」 「ん？」 「なんかさ、頭の上に花でも咲いてるように見えるぜ」 　そうなんだよ。まさしくそんな状況。 「湯たんぽ智を堪能したから？」 「なんだよそれ」 「オレ今すっげー満足」 　流石にそう言われると、それ以上は何も言えない。相変わらず亮介はニコニコしたまんまだ。もしかして、昨日オレが寝ちゃった後に何かヘンなものでも食ったんじゃないか？　ここまであからさまにニコニコされると、逆に心配になってしまう。 　何が何だかよく分からないんで、とりあえず朝食の残りを食べることに集中した。 　片付け要員で来たクセに何もしてなかったんで、朝食の皿はオレが洗うことにした。と言うか、オレに洗わせてくださいってカンジ？　少しは仕事しないとな。 　でもさ……なんつうか、めちゃ背中に視線感じるんだけど？ 「トーモ♪」 「ヒッ！」 　ほらな。やっぱ予感は当たるんだよ。洗い物が終わって手を拭いてたら、亮介がひっついてきた。 「やっぱ智あったけー」 「オレもうやだ……」 「なあなあ、もうちょっと湯たんぽしてくんない？」 「えー、もうムリ」 「クリスマスプレゼントだと思ってさぁ」 「今朝もそうだったじゃん」 　結局お願いされまくって、またまた湯たんぽ状態だよ。しかもさ、今ソファに座ってるんだけど、背中に亮介がひっついてるんだぜ。なんか、オレのＨＰがすっごい勢いで減っていくような気がする。ため息ついてもいい？ 「あのさぁ、このままの状態で聞いてくれる？」 　湯たんぽなオレ？を堪能していた亮介が話し出した。 「オレ、智のこと好きだよ。恋愛的な意味で」 　ナ・ン・デ・ス・ッ・テ