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36.大好きだよっ!

「こんなもんかなぁ。ホコリっぽいから掃除機かけた方がいいかも」  クローゼットに服をしまい終え、空になったダンボールを畳みながらひとりごちた。今は3月、あと一週間ほどで4月になる。  今オレがいるのは新居……新居でいいのかな?……うん、新居だ。その新居の中の一室、オレの部屋ってことになる。ここは、とある場所のとあるマンション。間取りは2LDKで、オレ以外に同居人がいる。その同居人って言うのは……。 「片付いた?」  カチャっとドアが開いて、声がかかった。 「今終わったとこ。ホコリっぽい気がするから掃除機でもかけようかと思ってたんだ」 「じゃあ、オレ持ってきてあげるよ」 「サンキュ」  高校を卒業して、来月オレたちは大学生になる。念願叶って第一志望に合格して、オレは家を出た。家を出ることに対しては難色を示されたんだけど、ひとりじゃないってことであっさりOKが出たんだ。 「智くんひとりだったら心配だけど、亮介くんと一緒なら安心ね」  そんな言葉と共に。  オレってそんなに頼りないのかな?  ちょっと納得いかないけど、まあいいや。  そうなんだ。夏に約束した通りオレと亮介はこの春から一緒に暮らすことになったんだ。と言うか今日がその初日。ドキドキの同棲生活の始まり……なんてね。一応ルームシェアってことになってるよ。だからお互いの部屋にベッドと机があって、LDKは共有スペースってカンジ。でもきっと、寝るのは一緒のベッドになるハズ。  そう言えば亮介のベッドはセミダブルだった。どうやって周りを言いくるめたのかは知らないんだけどね。「ホントはダブルベッドが欲しかったけど、さすがにそれはムリだった」ってセリフを聞いたときは、もっとビックリだよ。ルームシェアでダブルベッドって有り得なくね?  時々思うんだけどさ、亮介ってどっかぶっ飛んでるとこあるんだよなぁ……。 「晩メシどうする?」 「とりあえず近所を散策がてらスーパー行かね? ウチ今お米しかないし、外食したにしても朝食用の何かは買っておく必要があるよ」 「そうだな。そう言やぁ米しか無いんだっけ」 「そっ、お米以外はこっちで買うってことになってたしね」  今ウチにある食材ってお米だけなんだよ。これはお母さんが持たせてくれたものなんだ。お米さえあれば、あとはスーパーの惣菜でも大丈夫でしょうってことで。  受験が終わってルームシェアをするってのが確定してから、オレはお母さんにいろいろ教えてもらったんだ。超初心者の台所ってタイトルが付くようなことだけど。一応今ではお米はとげるし、味噌汁は作れるし、包丁も使える。ただし、じゃがいもとか人参なんかは皮剥き器を使いなさいって言われたけどね。うん、自分でも分かってる、包丁を使ったら実が半分くらいの大きさになってたってことは。  初心者向けの料理本も買ったから、味付けは大丈夫だと思うんだ。あとは実践あるのみ。ちなみに亮介は普通に料理ができる。親が共働きだから自分で作る機会も多かったらしい。そう考えるとオレって恵まれてたんだなって思う。  あっそうだ、オレら以外のことをちょっと話そうと思う。  一応全員どっかの大学に来月入学することになったよ。梨奈ちゃんは念願のバレーの強い大学に受かって、春からは寮に入るんだって。愛理ちゃんは女子大。自宅から通って女子大生ライフを満喫するって言ってた。雅人は工業系の大学だったかな。自宅からはちょっと遠いからひとり暮らしするんだって。信一は第一志望は残念ながらダメで、すべり止めで受けた大学に入ることになった。  恋愛面で言うと、信一と梨奈ちゃんは卒業するちょっと前にお別れしちゃったんだ。ケンカ別れしたワケじゃないから、友達に戻ったってとこ。そして一番驚いたのは雅人だ。受験が終わった直後から猛烈にアタックして、今はラブラブ真っ最中ってところ。誰とって? あの仲宗根さんとだよ。ちょービックリってカンジだね。まあ今後も仲良くしてくれたらって思うよ。 「じゃあ、これからのオレたちに乾杯!」 「なんだよそれ」  笑いながらグラスをカチンとやったら亮介がスネた。だってそんなクサいセリフ照れるじゃん。  あの後ふたりでスーパーに行ったんだけど、調味料やら食材、それに洗剤なんか買い込んだら大量になっちゃって、結局今日の晩御飯は宅配のピザになったんだ。乾杯はコーラでだよ。未成年はお酒飲めません。って言うか、弱すぎて飲んだ途端に寝ちゃう自信がある。 「あーでも、これからはずっと智と一緒だ」 「そだね。ふたりでやってくのに、いろいろルールとか決めないとだね」 「そうだな……。でもそれは明日からってことで、今は……」  亮介の顔が近づいてきて、オレたちはキスをした。 「今は智を食べたい。ここんとこ引越しの準備でゆっくり会えなかったし」  そう言って、オレは亮介に食べられた。 「んっ、あっ、ああぁぁぁ……、んぁっ」  ズルっとオレの中から亮介が抜けていく。それすらも快感に感じて声が出てしまう。そしてすかさず入ってくる亮介の指。それは掻き出す行為であると共に、再びオレをイカせる行為でもあるんだ。執拗にオレの感じるところを刺激して、必ずイカされてしまうんだ。  亮介はこれを楽しんでるみたいで、ちょっとイジワルかなって思う。一度だけ文句を言ったことがあるんだけど「最後にもう一回智のイってる顔見れて、すげー嬉しい」ってニコニコ顔で言われたらさぁ……。 「これから毎晩こうやって智と一緒に寝れる。めちゃ幸せ」  ベッドの上で亮介がしみじみとつぶやいた。  思うんだけどさ、亮介ってもしかしたら超甘えん坊なんじゃないかって……。甘えられるとなんか、くすぐったくて、嬉しくて、そして愛しいなって思う。まあお互い甘えたり甘えられたりってカンジなんだろうけど。このまま続いてったら嬉しいな。  今の亮介の言葉、オレも一緒。嬉しくて、めちゃめちゃ幸せ。  だからオレは亮介に抱きついて、おでこをくっつけてこう言ったんだ。 「亮介、大好きだよっ!」  ホント、大好きだ!

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