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35.一緒に……
気がついたら午後ももう遅い時間だった。そう言えばお昼食べそこねたな。でも不思議とお腹は空いてないや。疲れすぎて空腹かどうかもわかんないのかも。ホント、もう動けません、全く動けません。
亮介は、シーツを替えてオレを風呂に連れてったりと甲斐甲斐しい。オレまだ高校生なんだけどさ、ちょくちょくこうやって介護されてるような気がする。なんか複雑だ。
「今日、智んち泊まってもいい?」
シーツの洗濯が終わったらしい亮介が部屋に戻ってきた。
「いいけど、大丈夫なの?」
「特に問題は無いよ。それに、智送っていきたいし」
そうだね。動けるようになるまでまだちょっと時間かかりそうだし、動けてもヨロヨロしてそうな気がするから、亮介に付いてもらった方がいいかも。
それにしても……
「亮介さぁ……、ちょっとサカりすぎ。オレ身体もたないよ」
「う――ゴメン。でも、オレ今すっげー満足」
とっても晴れやかな笑顔なんだけど……、なんだろ、ちょっとムカつく。いやいや、オレも気持ちよかったんだから文句言っちゃいけないか。でもやっぱ文句言いたい……。
「何の運動してきたか知らないけど、智くんはもうちょっと体力付けた方が良いんじゃないのかしら?」
かなり疲れた様子で帰宅したオレを見たお母さんの一言がコレだ。何の運動かを聞かないでくれたのは有難いけど、これはオレじゃなくて亮介がいけないんだと言いたい。そう思ってチラっと隣を見ると、亮介はすました顔でケーキを食べていた。うーん……、やっぱり何か納得いかない。
でも少しは考えた方が良いのかも。毎回介護じゃなぁ……。
珍しく早朝に目が覚めた。
隣では亮介が静かに寝息を立てている。さすがに夏なのでくっついて眠ることはないけれど、泊まるときは同じベッドで寝ている。シングルベッドだから完全に離れて眠るってことはムリだから、実はちょっと暑苦しい。でも、別の布団で寝ようとは思わないのが不思議だ。
目が冴えちゃったんで、ヘッドボードにもたれつつ亮介の頭を撫でてみる。いつもは亮介がオレの頭をクシャっとするけど、よく考えたらオレがやるのは初めてだ。ふふ……、なんかクセになりそう。
ほっこりした気分になりながら、昨日の亮介の言ったことを考えてみようと思う。
「大学は同じとこ受けようよ。できれば家からちょっと遠いとこ。オレさ、智と一緒に暮らしたいんだ」
できれば同じ大学に行きたいと思ってた。それは今もそう。でも、一緒に暮らすってのは全く考えてなかったんだ。だから驚いた。言われたことにも驚いたし、亮介がそこまで考えてたってのにも驚いた。
「智とオレはきっと学部は違うと思うんだ。そしたら講義とか付き合いとかバイトとか、いろいろ会えないこともあると思う。でも一緒に暮らしたら、朝と夜は必ず顔を合わせられるし、話ができると思う。もちろんエッチも。なんかオレ、智と離れたらダメなような気がするんだ。離れたら浮気しちゃう自信あるし」
最初はうんうんって聞いてたけど最後はムッとしたんだよな。何だよ、浮気する自信って。まあそこは冗談だって言ってたけど。いや……、でも……、もしかしたら心配した方が良いんか?
亮介モテるしな。
大学行ったらキレイな女の子とかいっぱいいそうだしな。
……なんかヤだな。
嫉妬女みたいな思考になりそ……。
嗚呼でも……、オレも亮介と一緒にいたいな。これからも、この先も。
「もう起きてたんだ。おはよ」
「おはよ。珍しく目が覚めちゃってさ」
起き上がった亮介はチュッてオレにキスをしてきた。お返しにオレもキスを返す。どちらのキスも触れるだけの軽いキス。それからふたりでヘッドボードにもたれてボーっとする。
「夏休みも今日までだな」
「うん……、なんかあっという間だったな」
それからまた、ふたりして無言。
でも全然イヤじゃないんだ。なんか落ち着くって言うか……。
「なあ亮介……、昨日の話なんだけどさ」
「ん?」
「オレも……、亮介と一緒にいたいや。って言うか、住みたい」
亮介は何も言わなかったけど、強くオレの手を握ってきた。
夏休みが終わって2学期が始まって、家と学校と亮介の家を往復……、3ヶ所だと往復って言うのかな? とにかくそんなカンジ。
亮介んちではマジメに勉強してた。まあたまにはイチャイチャしちゃったり……ガッツリしちゃったり……、でも基本は勉強。本当の本当に一緒の大学に行きたくて、勉強の合間に大学を調べたりしたんだ。
予備校へは行かなかったよ。秋に受けた模試の結果も悪くなかったんで、親も無理に行けとは言わなかったし。その代わり、問題集をたくさん買ってきて亮介と一緒に解いたりしてた。お互いの得意科目が違うってのは、こんな時ベンリだなって思ったよ。分からないところを補いあうことができたから。
とにかく、目標に向かって頑張ったんだ。
「智ぉぉぉ、智を補充したい。ダメ?」
「ダメ。今日はここまでやるって決めたじゃん。ほら、頑張ろうよ」
「ケチ!」
受験勉強中の力関係は、どっちかって言うとオレの方が上だったかも。
まあとにかく、二人とも頑張ったよ。
これからのために……。
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