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【夏の思い出】桜咲輝 前

Iの小説 【登場人物】 七瀬 颯人(ななせ はやと) 四ノ宮 翔(しのみや かける) 生ぬるい風が頬をかすめる。すぅっと空気を吸えば、鼻孔をくすぐるのは夏の匂い。 正確には、海沿いの塩っぽい爽やかな香り。 今年もこの、海沿いの塀でアイツを待つ。 この待っている時間すらも好きでたまらない。俺は今、付き合って3年になる恋人を待っている。 高校の夏休み、この海で告白をされたあの日から、俺たちは親友から恋人という関係になった。 高校卒業後恋人は県外の大学へと進学してしまい、年に一度だけ、こうやって会う日を決めている。 「かけるー!」 「颯人!!」 恋人は黒色のかっこいい車を道路の脇に止め、こちらへ歩いてきた。 俺は待てないとばかりに待ちに待った恋人の元へ駆けていく。 「ごめんな、遅れて」 「全然いいって!俺、颯人のこと待ってる時間好きだし」 颯人は無邪気にはにかむ恋人を、愛おしいと頭をなでる。 「俺颯人に撫でられるの好きぃ」 「お前あざといな」 え?と首をかしげる恋人が堪らなく可愛い。 親バカならぬ恋人バカかもしれないと颯人は苦笑した。 「なぁ、颯人」 「ん、どうしたんだ?」 「俺も颯人と一緒の県に住みたい」 「え?」 「だって、確かにこうやって年に一度だけ会えるのって織姫と彦星みたいでドキドキするけど、でもやっぱりもっと......颯人と居たい」 「翔、お前仕事はどうするんだよ」 「......なんとかする」 「そこまで考えてなかったんだな」 結果ばかり先走ってしまう単純思考な翔が可愛くてつい笑みがこぼれる。 「笑いやがってぇ......俺本気なのに」 「はいはい」 「絶対本気にしてないじゃん......まってまさか」 「?」 急に翔は顔色を変えとんでもないことを言い放った。 「俺以外に恋人がいるんだろ!?!?」 だから同じ県に住んで浮気がバレるのが嫌だったんだろと言いだした。 バカバカしいと思うしどうしてそういう発想に至ったのか。颯人はたまに恋人の思考回路がわからないと頭を抱えた。 「あほか」 ポンと頭に手を置く。 「うぅ......じゃぁなんでそんなに乗り気じゃないんだよ」 「それは......会える頻度が増えると色々困るからだ......主にその、息子が」 「はぁ!?!?お前子供作ったのか!?浮気よりよっぽどひどいぞ」 「お前に濁し言葉は通じないことがわかった以上体で分からせる事にする」 「はい?」 颯人は翔の手を引いて自分の車の助手席のドアを開けてシートを指差す 「とりあえず乗ってくれ」 「意味わかんねぇ」 翔はぶつぶつと言いながらもしっかりと助手席に腰を下ろす。 「どこ連れてく気だよ」 「俺の宿泊しているホテル」 「はぁ?急になんで」 「察しの悪いお子様な翔が悪い」 「なんだよさっきから......本当意味わかんねぇ」 俯いた翔の頭に手を置いて撫で付ける。 「なんだよ......」 「俺は今日翔、お前を抱く」 「だく.....って......」 「本当はもっと早くこうしてればよかったんだな。翔の前では余裕のある紳士面をしていたかったのだけれど」 「そんなことしなくても、俺は颯人のこと好きやもん」 「俺が見栄を貼ってたいんだよ」 「いみわかんね」 目的地であるビジネスホテルの駐車場へ車を駐車させ、手続きを済ませて部屋へと戻った。 部屋の状態は朝となんら変わらない。唯一つ変わったのは隣に翔がいることか。 「シーツとか綺麗なままじゃん、本当に泊まってたのか??」 「俺は綺麗好きだから。翔と違って」 「なんでそんなツンツンするんだよぉ」 むぅっと膨れるその可愛い面を軽くつまんで、唇に優しくキスを落とす。 「ひ、久しぶりで、きんちょ、しちゃった」 はにかむその表情を、淫らに歪めたい。 そう思ってしまうのは男の性か、はたまた己の汚れた欲望からか。おそらくは両方だろうか。 柔らかい口付けから、奥深いものへと。 「はっ、んっ......はぅ」 「はなで、呼吸しろよ」 「らって......きもちよくて、わかんない」 高揚しきってぼぅっとした瞳で俺を射抜くこの姿は、あの鈍感で純粋な俺の恋人だと思えば思うほど熱を帯びていく。 じゅくりと、腹の底で欲が笑う。 「かける、いれたい......」 「いれ、る?」 「あぁ、いれる。いれたい。翔とセックスがしたい......でも」 「俺も、したい。も、くるしぃ、する。セックス、する」 「......かける、でも今日はダメなんだ。ちゃんと準備をしてない」 「じゅんび?」 「あぁ、ちゃんと洗浄をしてない。だから今日は、ちょっとだけいけない大人な遊びをあいよう」 「あそぶ?」 まるでそれは子供をあやすように、揶揄すように。 「あぁ、いけない遊びをするんだ」 颯人は翔を仰向けに押し倒し両足を持ち上げ肩にかけ、太ももの隙間に己の張り詰めた怒張を滑り込ませ翔の清らかなソレに擦り付ける。 「くぅっ......こ、こすりつけたらっ、やぁ」 「翔には刺激が強かったか?お子様だもんな。かけるは」 「おこさまじゃぁ、ないぃ......んぅ、はんっじゅんじゅんするぅ」 「なんだよそれ」 快楽になれていない恋人は気持ち良さが理解できていないのだろう。そんな汚れない体を俺が桃色に染め上げている。その事実にさえ颯人にとっては十分興奮できた。 「ほら、これが大人なキスだ。かけるとおれの亀頭がちゅってしてるぞ」 「やぁっ......はずかしいから、やめてよぉ......んっ!!やっ、やっあぅっん......そ、そんな、やめ」 「きもちいいだろ?そろそろイかせてあげるからな」 颯人は 「はぅぅ......なんか、せっくすしてるみたいや......えっち、してる......んっ、もっ、だめっ、いきたい、イッてもいい?......はやとっ」 いちいち訪ねてくる健気ささえも情欲を掻き立てる。 「お前さ、あんま煽んなよ」 「あおって、なぁ、んっ、あっ、あぁっ......はぁ、ん」 翔は俺にしがみついてビクビクと吐精した。 息を整えた翔は申し訳なさそうに「先にイっちゃってごめん」としょんぼりとしている。 俺はそんなできた人間じゃない。翔のような純粋なお子様にはとことん付け入る。 「結局俺イけなくてさ......じゃぁ、俺のコレ、なめれる?」 「が、頑張ってみる」 その後の感想としては翔は下手なようでいて、教えこめばその上をいく。そっちの素質があることがわかった。 「翔、じゃぁ......次に会うのはまた来年か」 「うん......」 「これ、持っとけよ」 翔はキョトンとした顔でソレを受け取る。 手に握ったソレを見た瞬間、輝いた瞳が俺を写した。 「これって......」 「あぁ、俺の家の合鍵。俺の家知ってるだろ?ソレ渡しとくからいつでも来るといいよ。なんなら翔さえ良ければいまからでml一緒に住むつもりだから」 ぱぁっと明るくなる表情を浮かべた顔にキスを一つ。 俺たちの一年に一度の“約束”は、その先に用意された未来のためにの果たされるべきもの。 その先がどうか幸せなものであるように。

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