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第6話

彼が女性もののイヤリングやネックレスを見ている最中を見計らって、先ほど遠目に見ていた宝石を盗み見る。 別に悪いことではないけれど、なんとなく気が引けて、横目に。 やっぱり綺麗だ。 近くで見ると余計、光が乱反射して煌めいて見える。 「少し店員さんと話してくるから、そこにいて。」 出てきた店員さんは、さっきの店とは違い、ビシッとスーツの紳士だ。 なにやらアシュリーと話し込んでいる。そして話が終わると、とても機嫌良さそうにアシュリーは店を出ていった。 いいプレゼントが買えたのだろうか。 「テオ、さっき、アクアマリンをじっと見ていたでしょう。」 とりあえず今日は帰ろう、と言われた帰り道、彼にズバリと指摘された。 今日は編み物セット以外にプレゼントが見つかるまで帰らない、という話じゃなかったのかとすこし疑問に思いながら、家の方向に引き返していた。 …いや、べつに他に何か欲しいわけではないけれど。 アクアマリン、か。きっとさっきの宝石の名前だろうと名前を聞いてピンとくる。気づかれていたのが恥ずかしい。 「どうしてあれだったの?」 否定するまもなく、追加で質問をされた。 言わなくともわかる、ということか。これでは嘘をついても見透かされてしまうだろうと、本当のことを答える。 「アシュリーの、目の色と同じだから。」 「え?」 彼は予想外だというように目を丸くした。 そういう反応をされると恥ずかしい。どうせそこまで顔に出ないけれど、赤くなってしまいそうでなんとか抑えようと努める。そして、付け加える。 「空みたいな色で、光に当たると綺麗に乱反射して… でもどこか、なにもない空みたいで、寂しげで。 美しいなと。」 思ったことをこうもスラスラと言ってしまったのがなぜかわからない。 彼の瞳に似ていることを力説してなにになるのだろう。ますます恥ずかしい。 「…アシュリー?」 彼の方を見ると、彼は顔を背けて違う方角を見ていた。 なぜか耳が真っ赤だ。いきなりそこまで寒くなった気はしないけれど。 「テオ、なんか女誑しみたい。」 「え?なに?」 ボソッと彼がつぶやくと、もう、といって抱きしめられた。 そんなに寒いかな…?寒いけど。 頭を、いつもみたいに愛しそうにではなくすこし乱暴に撫でられたあと、身体を離された。 ちなみに抱きしめられたのは家のすぐ近くで、ここまでくれば周りに誰もいない。 アシュリーはとても寒がり。 宝石を送る恋人がいる。 僕と外に出るときは、変装する。 今日1日で、すこし彼のことがわかった。そしてやっぱり、一緒にいるととても楽しい。 久しぶりの外出は2時間くらいで終わり、帰ってきたのはちょうど12時半ごろ。 そしてそのあと一緒に寒かったねと言いながら温かい食事を作り、そして食べて後片付けをした。 片付けが終わるとソファーで2人で微睡み、すこし話をしているうちに、僕は心地よい眠りにおちていった。

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