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改元!令和SP★言祝月夜(ことほぎづきよ)④
『彼』を可視化するのは不可能だ。
なぜならば……
常時、身にまとっている彼のスーツは、光の屈折を歪曲する。
人の視覚を歪ませる特殊な屈折率の戦闘服が彼のレンジャーたる証であり、このスーツにより彼は自身の生命維持活動を行う。
命を繋ぐスーツが、他者の命を搾取 ぐとは皮肉だね。
不可視の光学迷彩機能スーツをまとう戦場の暗躍者を、いつからか人は畏怖の念を込めて、こう呼んだ。
《見えざる裁きの手》
コードネーム・変態クリスタル
彼の姿を知る者は数少ない。
(私だって見た事ないさ)
しかし、彼は存在している。
『それで?あなたは、俺になにをお望みですか』
ほら。
彼は、ちゃんといる。
なんだかんだ言いつつも、私を見守ってくれてるじゃないか。
「時間がない。単刀直入に言うよ。仲間に追われていてね」
『理由は……聞かない方がいいですね。時間がないのでしたね』
「話が早くて助かるよ」
相手は精鋭。レンジャー隊だ。仲間の実力は誰よりも把握している。司令塔なのだから。
こうしている間にも、レンジャー隊は私を追っている。
ほら、股ぐらのちんリウムがこんなにビュクンビュクン、反り返っている。
「雁首と鈴口の先だね」
『………』
「………」
『??』
この空気感。
クリスタルが小首を傾げているらしい。
「すぐ近くまで迫って来ている事の比喩だよ」
『それを言うなら『目と鼻の先です』』
「変態レンジャー間では『雁首と鈴口の先』で合ってるよ」
ビュクンッ
ピンク、また私に近づいたね。
時間がない。
「君の光学迷彩機能スーツを貸してほしい」
『透明になって逃げる作戦ですか』
「上手くいくよ」
私の戦略に敗北の二文字はない。
「私自身を不可視にする」
精鋭レンジャー隊といえど、見えなければ追いかけられまい。
『貸せません』
「なぜッ」
『スーツは俺の体にフィットするよう作ってありますので。あなたの身長と体型には合いません』
「構わない。ちんリウムさえ隠せられれば問題ない」
『………』
「………」
『………』
「言っただろう。私自身を不可視にする、と」
『ハァァァ~~??』
私自身って……
『その『私自身』かァァァーッ』
「無論!立派な私自身だよー!」
『んな事、誰も聞いとらんわーッ』
「聞かれる前に応えるのが、上に立つ者の器量だよ」
プルルン~↑↑
「ほーら。誰もが羨むデカチンだよー↑↑」
『ムギャアーッ、見せるなっ!変態!』
「変態ではない。変態ブラックだ。きちんとコードネームで呼びたまえ」
『あなたこそ、股間のソレをきちんとしまえーッ』
ハァハァハァハァッ
「クリスタル、呼吸が乱れているね。心音も……」
『乱れさせたのは、あなたです!司令塔』
バンッ
暗闇にラップ音が響いた。
無論、心霊の類いではない。クリスタルだ。君が、ここまで感情を露にするなんて珍しい。
バンバンッ
クリスタルが《見えざる裁きの手》で、机を叩いている。
『想像してみてください。『私自身』を隠したあなたの股間は、どうなるんですかッ』
「確かに。大事なことを忘れていたよ。ありがとう、クリスタル」
『分かればいいんです』
光学迷彩機能スーツは、『司令塔自身』を透明にするためのスーツではないのだ。
「タマも一緒に消さなければいけないね!」
『………………へ?』
「そうだよ!ちんこと金玉は一蓮托生!セットだよ。タマだけプラプラしていてはいけないよ!
ちんこと金玉、両方透明にしよう!」
『ハァァァ~~??』
「タマだけの股ぐらはダメだ」
バッサァー
闇色のマントが暗がり高くはためき舞った。
ブルンッ
プリプリ♪
天を穿つ巨大な幹の根元で、雄に見合う大きな玉袋がプルンプルン揺れている。
「さぁ!シンボル透明化計画の始まりだよ!」
眉間に指を押し当てて、視線だけ後方を顧みた。
そこにいるね、クリスタル……
「予備の光学迷彩機能スーツを貸したまえ」
『ありません』
あっても貸さん!
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