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パーフェクトちんリウム

「お尻の穴の特訓がしたい!?」 これでもかと裏返ったレッドの声に、 「はい!」 「うん!」 別の声が元気に応えた。 きっちりふたり分。 ぽかんと口を開けたまま動けないレッドを、グリーンとピンクが瞳をきらきらと輝かせて見つめる。 レッドの隣では、ブルーがその長い身体をふたつ折りにしてぶるぶる震えていた。 ことの始まりは数時間前、バスルームにて―― 「よう」 「あ……おつかれさま、です」 ピンクは、きのこ柄のパンツをずり下ろしたまま動けなくなった。 バスルームの中からほかほかの湯気を纏い出てきたのが、オニキスだったからだ。 てっきり中にいるのはグリーンだと思っていた。 オニキスは、変態レンジャーの中でも特に戦闘力の高いメンバーだ。 前線に駆り出されることが多いオニキスとは任務も重ならないことがほとんどで、ピンクはまともに言葉を交わしたことがない。 親友のグリーンと一緒にいるところはよく見るが、ほかのレンジャーたちとは一線を引いているようにも見える。 オニキスは、固まったままのピンクを無表情で見下ろした。 「グリーンならまだ中だ」 「えっ」 「一緒に風呂に入りたくて来たんだろう?」 ふと微笑まれ、ピンクはこくこくと頷いた。 ここのところ任務が忙しくすれ違うばかりだった親友と、久しぶりにゆっくり会いたいと思っていた。 だから隣の部屋の扉が開く音を聞きつけ、慌ててここまで追いかけてきたのだ。 「逆上せるなよ」 オニキスは低い声でそう言い残し、去っていった。 *** 「グリーン?」 「ピンク!」 扉の隙間から中を覗くと、グリーンはちょうどシャンプーを泡立てているところだった。 新緑色の髪が、白い泡と混じって綺麗なマーブル模様になっている。 満面の笑顔で迎えてくれたグリーンの隣に並び、ピンクもシャワーを捻った。 細い線になって降り注ぐお湯を浴び、ほう、と息を吐く。 そして、泡もこになった身体を熱心に擦るグリーンを見た。 「グリーン、オニキスさんとちんリウムしてたの?」 「は、はあ!?」 「さっき脱衣所でオニキスさんに会……」 「してない!してないよ!俺は風紀委員なんだからお風呂でちんリウムなんてするわけないでしょ!?」 「でもさっきそこでオニキスさんに会……」 「してないから!ほんとに!」 わたわたと振ったグリーンの手が当たり、シャンプーのボトルが落ちる。 ブラスチックが転がる大きな音が響き、ふたりは一瞬びくりと身体を強張らせた。 「ああもう……」 グリーンが、水色のそれを拾い上げようと身をかがめる。 すると、ピンクの目の前にグリーンの臀部がデーンと現れた。 左右に引き伸ばされた尻肉の間に、控えめな窄まりが見える。 うっすらと生えた乳緑色の毛が、綺麗な襞を守っているようだった。 ピンクは、グリーンのかわいらしいアヌスをじっと見つめた。 少しだけ逡巡して、少しだけ身を乗り出して、真っ赤な舌先を少しだけ伸ばして、ふっくらと盛り上がった梅色のその蕾を、 ……ぺろ。 「ひゃぁうっ!」 舐めた。 「ピ、ピピピピンク!?」 割れ目を押さえながら振り返ると、自分以上に目を見開いて驚きを露わにしているピンクがいた。 葡萄色のふたつの瞳が、なぜそんなに驚くのか、と問うてくる。 グリーンは、自分のちんリウムが輝いていないことを念のため確認してから、今だにきょとんと目を丸くしたままの戦友を見た。 「一応確認するけど、なんで舐めたの……?」 「目の前にグリーンのお尻があったから」 なんだその〝そこに山があるからだ〟みたいな無茶な理屈は! グリーンは、頭を抱えた。 幼い頃父親を亡くしたピンクは、荒んだ生活を送っていたところをブラックに救出され、以来、変態レンジャーたちに見守れながら育った……らしい。 そのせいか時々……いや、けっこう頻繁に突拍子もない〝変態的行動〟に出ることがある。 しかも本人はそれを至極当たり前の行動だと思っていて……よし。 ここは、風紀委員としても、親友としても、きちんと伝えてあげなくては! グリーンは表情を引き締めてピンクに向き直った。 「ピンク、前にも言ったと思うけど……友達同士はこういうことしないの!」 「グリーンは俺の友達じゃないからいいじゃん」 「えっ……」 「グリーンは俺の家族だもん」 「家族ならなおさら!いけません!」 思わず風紀委員の口調で言うと、ピンクは見るからに落ち込んでしまった。 いつもぴょこぴょこ元気に飛び跳ねている小さなちんリウムが、しょんぼりお辞儀してしまっている。 グリーンは深い息を吐き、ピンクの上気した頬をそっと撫でた。 「ピンクさ、最近ブラック司令塔が忙しいから溜まってるんじゃない?」 「……そんなんじゃない」 *** かぽーん。 浴槽ギリギリまで盛り上がったお湯が時折溢れ、ぽたぽたと雫が落ちる音がする。 水色の大海原の上に、緑と桃色の頭がひとつずつ、ひょっこりと生えているようだった。 ピンクはグリーンをちらりと見てから、ぽそぽそと口を開いた。 「……グリーン」 「ん?」 「グリーンは、オニキスさんが好きなの?」 「なっ……」 全力で否定しようとして……やめた。 ピンクの瞳があまりに真剣で、あまりに自分を思いやる気持ちを携えていたから。 言葉には出さずとも、会えない間もきっと自分のことを気にかけてくれていたのだ。 親友とは、そういう存在(もの)。 「うん、好き……だと思う」 バシャン、とお湯が跳ねる音がした。 一気に破顔したピンクが、少しだけ離れていた距離を詰め寄ってくる。 「俺はブラックが好き!」 「知ってるよ」 変態レンジャーに入隊してすぐの頃――まだピンクと友達でもなんでもなかった頃。 ブラックの後ろをどこまでもチョコチョコとついて歩くピンクの姿を何度も見た。 それは、まるで父と息子のような。 兄と弟のような。 やがてピンクと親友と呼び合う間柄になり、その哀しい生い立ちを知った。 ピンクが抱いている、ブラックに対する甘い想いも。 毎晩のように繰り広げられている、ブラックとピンク、ふたりだけのちんリウムパーティー。 いつもふたりは幸せそうで、でもふとした瞬間、ひどく辛そうにも見えた。 ピンクは、そのことに気がついていないのか。 それとも気がついていて、あえて何も言わずにいるのか。 鈍いようでいて鋭い親友の真意は、グリーンにもわからなかった。 「オニキスさん、すっごくおっきかった」 「大きい?なにが?」 「ちんリウム!」 またこの子は……とグリーンは苦笑を禁じ得ない。 「ブラック司令塔だって大きいでしょ?」 「うん。でも、ブラックはこれくらい。オニキスさんは……こおおおれくらい」 ピンクが一生懸命両腕を広げながらアピールする。 そんなにでかいわけがない。 そう思いながらも、グリーンはちょっと嬉しくなる。 なんだか、オニキスのことを褒められているようで。 どんなことであれ、好きな人のことを良く言ってもらえるのは嬉しい。 「グリーン、おしり痛くないの?」 「だからさ……」 この子にデリカシーというものを教える大人は……いなかった、か。 なんてったって変態レンジャーズだもの。 「おしりは……痛くないよ。オニキスさん優しいから」 「ふぅん?」 「それに、全部挿れてないしね」 「え」 「え、ってまさか、ピンクはブラック司令塔に全部突っ込まれてるの?あれを!?」 「えーと……どう、なのかな……?」 今度はグリーンに詰め寄られ、ピンクは慌てて記憶を呼び起こす。 確か、ブラックと初めてちんリウムをした時に―― ――今夜はハーフ・ちんリウムにしておくよ。 ――どうして? ――ピンクのお口の準備ができたら、その時はパーフェクト・ちんリウムだよ。いいね? あ、思い出した。 「ブラックも、半分だけだ……」 「やっぱりね。全リウムなんておれたちにはまだ……」 ザバアァッ、とお湯の滝を創り出しながら、ピンクが唐突に立ち上がった。 「ピンク?」 「俺、特訓する!」 「特訓!?……って?」 「お尻の穴!特訓して、パーフェクトちんリウムできるようになる!」 いや、パーフェクトちんリウムって――なに。 「ピンク、落ち着いて……」 「グリーンは平気なの?」 「な、なにが?」 「オニキスさんとハーフ・ちんリウムのままでいいの?」 「なにその言い方……」 「平気なの!?」 平気か平気じゃないかと聞かれたら…… 「平気じゃ、ない」 *** 脱衣所が、いつになく騒がしい。 「スカイブルーさんに聞いてみようよ!」 「だ、だめだよ、ピンク!」 「どうして?」 「会った瞬間に、スカウターで変態値計られちゃうよ!?」 「そんなの別に……」 「去年の変態度テスト、九千以下で一緒に補習受けさせられたの、忘れたの……?」 「あ、あの補習……!」 「ね?」 「う……じゃ、じゃあレインボーさん……」 「だめ。非処女はもれなく角でぶっ刺される」 「グリーンはオニキスさんとちんリウムしてないんじゃなかったの……?」 「ああもう!そこは察してよ!」 「う、ごめん。じゃあ、パールホワイトさん……は、この時間はまだ社会人かなあ」 「会社員、ね。アクアマリンさんは……」 「爽やかすぎて聞けない……マルーンさんならきっと美味しいケーキをご馳走してくれて……」 「で、肝心なことはきっと聞けないまま終っちゃうよ。クリスタルさんは……」 「今日もグレーさんが隣にいるから……茜さんは、きっと……」 「うん、レインボーさんのために守ってると思う。パープルさんは……」 「えっ、パープルさんはちんリウム振る方だよ?」 「えぇっ、そうなの?」 「だってこの間イエローさんと……」 「あ、いい!聞きたくない!」 「えー……じゃ……」 「やっぱり……」 「うん……」 レッドさんに聞こう! 「ま、待って、ピンク!」 レッドの部屋の扉をノックしようとしたピンクを、グリーンが押しとどめた。 「どうしたの、グリーン」 「もしレッドさんがブルーさんと一緒だったらどうする?」 「別にどうもしないけど……」 「もし一緒にちんリウムしてたら……?」 「あ……」 ピンクとグリーンは顔を見合わせて、ゴクリと喉を鳴らした。 ブルーのちんリウムは規格外。 それは周知の事実だが、規格外のブルーのちんリウムにはそれに纏わる都市伝説がいくつもある。 ナチュラルちんリウムを会得しているとか。 夜中になると喋り出すとか。 ブルーリウムと触れると、自分のちんリウムも規格外になってしまう……とか。 もしうっかりブルーのちんリウムに触れてしまったら……。 同時に想像して、ふたりは同時に青ざめた。 「グリーンにピンク?」 「ひゃあ!」 「うわあ!」 突然背後から肩を叩かれて、ふたりは全身で飛び上がる。 恐る恐る後ろを振り返ると、赤と青のツナギを着たふたりが立っていた。 「どうしたの、僕に何か用?」 「レッドさん!……とブルー、さん」 「なんだよ、俺がいちゃ困るのか?」 「い、いえ、そんなまさか!」 グリーンはブンブンと首を振り、ブルーの股間を凝視しているピンクの脇腹を突いた。 「ちょっとピンク!見すぎ!」 「あ……」 ブルーが端正な顔をしかめたのを見て、ピンクは慌てて視線を上げる。 「実は、レッドさんに相談があって……」 「相談?いいよ、入って」 「あ、ありがとうございます!」 レッド、ブルーに続いて、グリーンとピンクが部屋に入る。 そして、促されるままにベッドに腰を下ろした。 「それで、相談って?」 「え、えっと……」 「俺がいちゃ言いにくいことなのか?」 「そ、そういうわけじゃ……」 ブルーに訝しげに見下ろされ、グリーンとピンクは顔を見合わせて頷いた。 「実は……」 「うん?」 「俺たち……」 「お尻の穴の特訓がしたい!?」 そして、ようやく冒頭に――戻る。 「そ、そういうことかよ。くくっ……そりゃあ、レッドが適任だわ」 「ちょっとブルー!」 堪えきれずに腹を抱えて笑い出したブルーはとりあえず捨て置いて、レッドはグリーンとピンクに向き直った。 「なんで急にそんなこと……なにかあったの?」 「ブラックとちゃんとパーフェクトちんリウムできるようになりたくて……」 「俺も、オニキスさんに我慢してほしくないんです」 パーフェクトちんリウムってなんや……とレッドは一瞬呆れたが、 「健気だね、ふたりとも」 レッドは、どこか懐かしさを覚えた。 ブルーの規格外ちんリウムを受け入れたくて、毎晩頑張っていた頃を思い出す。 今ではもう懐かしさすら覚えるくらい昔のことのように思えるが、レッドにはグリーンとピンクの気持ちがよくわかった。 大好きな人のすべてを受け入れたいという気持ち。 大好きな人とすべてで繋がりたいという気持ち。 それはとても純粋で、尊いものだ。 「ちょっと待ってて」 レッドは、クローゼットの中を漁った。 「これ」 しばらくして振り返ったレッドは、右手と左手にひとつずつ、短い棒のようななにかを持っていた。 グリーンとピンクは、思わず目を見張る。 その大きさと形は、ちんリウムに見えなくもないが……これは一体? 「大丈夫、綺麗に洗ってあるから」 「は、はい」 「……ありがとう」 グリーンとピンクは、おずおずと手を差し出してそれをひとつずつ受け取る。 見た目より意外に軽かったそれは、どこからどう見てもちんリウムだった。 もしかしてこれは……そういうこと、なのだろうか。 「ふたりにあげる。僕にはもう小さいから」 小さい? これが!? グリーンとピンクは、揃って手の中の偽リウムを凝視し、続いてレッドを見上げた。 心からの尊敬の念を込めて。 *** ブルーの引き締まった腹の上で、レッドの裸体が揺れている。 「今ごろあのチビちゃんたちふたりで突っ込みあってんじゃないか?」 「ふっ……んあぁ……っ!」 「見せてやればよかったのに」 「あ、ぁん……なにを……?」 「お前が自分で準備してるとこ」 「んんっ……!そんなの見せたらふたりとも卒倒しちゃうよ。それに……」 ――ブルーにしか見せたくないから。 「かわいいやつ」 ブルーはニヤリと口の端を上げ、レッドの最奥を突き上げた。 *** グリーンは、自室のベッドの上で悩んでいた。 手の中には、ついさっきレッドから受け継いだちんリウム(仮)がある。 オニキスのそれよりは小さいが、自分のそれよりは遥かに大きい。 レッドは詳しい使い方を説明してくれなかったし、まさか取扱説明書がついているわけでもない。 それでも、用途はひとつしかないに決まっている。 つまり、これを自分の穴に突っ込んで拡げ――… コンコン。 グリーンは、ビクリと肩をいからせた。 慌てて手の中のものを枕の下に隠し、平静を装う。 「……はい?」 「俺……ピンク」 「ピンク?」 ゆっくりと扉を開けると、そこには顔を赤らめたピンクが立っていた。 ちんリウム(仮)を握りしめて。 え、まさかもうそれ使って―― 「グリーン、ぬめぬめちょうだい」 「ぬめぬめ……?」 「これ、そのまま挿れたらものすごく痛かった。だからぬめぬめちょうだい?」 「ぬめぬめって……もしかしてローション?」 「うん。ぬるぬるになるやつ」 「いいけど……って」 そのまま挿れたんかい! 「いつもブラック司令塔と使ってるんじゃないの?」 引き出しをガサガサしながら、グリーンが呆れる。 「そうだけど……ブラックが持ってるもん」 「そういうこと……あ、あった。けど、ひとつしかない」 「……じゃあ」 「だめ!」 「まだ何も言ってな……」 「言わなくてもわかる!一緒にやろうって言うんでしょ!?だめだからね!」 「でも……」 「でも、じゃない。言ったでしょ?友達はそういうことしないの!」 「だってグリーンは……」 「家族ならなおさら!しません!」 「ええぇぇー……」 「ええじゃない!」 ……って、言ったはずなのに。 「はぁっ……グリーン、友達とはこういうことしないんじゃなかったの……?」 「んっ……親友だから、いいってことに……」 「うんっ……そうしよ……?」 「あっ……は、あ……」 「んんっ……ぁっ……」 いいんだ。 しょうがないんだ。 だってこれは、特訓なんだから。 オニキスのため。 ブラックのため。 パーフェクトちんリウムのため。 「あっ、グリーン……グリーン、もういく……っ」 「俺も……もう……っ」 そう、これはすべて、パーフェクトちんリウムのため――… *** 「おはよう、ピンク!いい朝だ……ね?」 「グリーン、もうみんな朝礼に集まってい……る……」 ブラックとオニキスは、同時に呼吸を止めた。 ふたりの視線の先には、 これでもかと乱れたベッド。 転がったローションのボトル。 二本のちんリウムもどき。 そして、 下半身丸出しで寝転がるグリーンとピンク。 言うまでもなく、ふたりの太ももはあれと思わしきものが乾いてテカっている。 「ん……ブラック……?」 「オニキス……さん……?」 まぶたを擦りながらむにゃむにゃ言うふたりはかわいらしい。 問答無用で押し倒したいくらいにかわいらしい……が。 「ふたりとも……」 「なに、してたんだ……?」 地を這うような声が耳に届き、グリーンとピンクは一気に覚醒する。 そして、お互いがお互いを見やり――青ざめた。 「こ、これには……きゃあ!」 「ふ、深いわけが……あ、ああっ!」 「グリイイイイイイィィン!」 「ピンクウウウゥゥ!」 俵のように抱えられ連れ去られたふたりがその後どうなったのかは、誰も知らない。 fin

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