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第1話

 みんなは、今。  仲良くしている友達や、先輩や後輩との出会いを。  ──鮮明に、覚えているだろうか?  ……俺? 俺は正直、覚えていない。  初対面という事象は誰にでもあったはずなのに、意外と覚えていないものだ。  ……きっと、みんなもそうだろう。  あまりにも運命的だったり、衝撃的だったり印象的だったり……。そういう出会い方でもない限り、覚えていないのが普通だと思う。  ──だけど、アイツとの出会いだけは。  ──きっと、一生忘れられない。  派手な金髪を、後ろでひとつに結べるほど伸びた髪。  耳には、いくつものピアスが付いていて。  見た目は完全に『不良』だとしか思えない。  そんなアイツと出会った時期は、高校の入学式。……まぁ、普遍的な状況だろう。特別感なんて、一切無い。  出会った場所は、校門から生徒玄関に続くアスファルトの上。……これも、実に普遍的だろう。  ──なら、どうして忘れられないのかって?  問題は【状況】じゃない。  ──問題は【言動】だ。  その男は、顔が汚れることなんか気にせず。  額を、アスファルトに擦りつけるように。  ──完璧な土下座をしながら、こう言ってきた。 『──初めて会った時から好きです。ぶっちゃけ顔が超好みです! 先ずはエロい顔が見たいので、交際を前提に性交してください!』  ……初対面なのに『初めて会った時から好きです』って、なんだ?  全然、全く、微塵も意味が理解できないその、告白。  しかも、性交から始めなくちゃいけない関係を望まれている。  俺史上、告白ランキングでワースト一位記録を保持し続けるであろう出来事に対して。  ──俺はただ一言だけ、返事をした。 『──無理』  それが俺、登坂(のぼりざか)(きり)と。  アイツ、箱根(はこね)雨竜(うりゅう)の。  ……忘れたいと願っても忘れられない、出会いだ。

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