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俺達のウインターカップ

湘洋は強かった。 俺みたいに大柄な選手はいないが、根屋先輩みたいに動きの速い選手が多いし、 ポジションの戻りが早い。 「俺は第2からだな」 新田さんの判断は正しい。 「お願いします新田さん。根屋先輩だけではもたない。新田さんのシュートの 成功率は高い。ギリギリですが点差が開くとまずい」 ハーフタイムに入り、ドリンクを渡しながら、 「根屋先輩、少し範囲広いです。新田さんと詰めてください」 「うるさい!やってるヤツが一番わかってるんだよ!ベンチのヤツは口出すな!」 控室が静まり返る・・・ 根屋はしまった!という顔で動揺を隠せない。試合に出たいヤツなんてここの全員なのに。 柴崎は少しだけ悲しげに微笑んで、 「そうですね。辛いのはプレイをしている人ですもんね。でも忘れないで下さいね? 補欠も、マネージャーも、もちろん俺も、皆先輩たちの味方ですよ」 そういって柴崎は一人控室を出ていった。 根屋からは血の気が引いていた・・・。 重い空気を新田が打ち消す。 「言われたことは理解できるな?俺たちはチームでやっていることを忘れるな!行くぞ!」 「ごめーん。ここ空いてる?」 「あ、柴崎先輩。コートじゃないんですか?」 応援席の一年生に不思議がられる。 「うん。今ちょっと休憩」 『いた方がよかったかな?少し隠れてようかな』 「うーん。やっぱりギリギリやばいな」 「え?3ポイント?交代選手か?シュートにセンスがある」 「やばい、あの選手のシュートに、メンバーが焦る!」 「だめだ、余計な体力使っちゃあ。フォーメーションが崩れる」 『五月さんの足もかなり重い・・・』 柴崎は椅子に深く腰を落として目を閉じる。 ピーッ! ウインターカップ三位は湘洋だった。

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